深セン市、メーカーの撤退を受け工場賃料の抑制策を検討

(中国)

広州発

2019年07月09日

深セン市政府が6月26日に同市人民代表大会常務委員会へ提出した「2018年深セン市における中小企業の発展状況に関する特別報告」(以下、特別報告)によると、工場の賃料や人件費の上昇、さらには環境規制強化を受け、2016年から2018年までに同市から中国の内陸部や周辺国へ工場を移転した企業は192社に達した。アパレルなど労働集約的な中小企業のみならず、電気電子関連の大手ハイテク企業のケースもあり、同報告書では、対応の必要性を指摘している(「深セン衛星テレビ」6月27日、「南方都市報」6月27日)。

相次ぐ大手メーカーの撤退

特別報告によると、2018年に深セン市から撤退した一定規模以上の工業企業(注1)は、同市で登記された企業数の1.1%を占める91社、その生産額は市全体の2%となる599億7,000万元(約9,595億円、1元=約16円)に達した。川上の大手メーカーによる移転が目立つ中、対策を講じず、こうした傾向が川下産業へと拡大すれば、サプライチェーンが分断され、産業集積の崩壊につながると懸念されている(表参照)。

表 深セン市における大手メーカーの撤退事例

賃料上昇の抑制に向け転貸借禁止を検討

近年、深セン市政府は製造業の撤退に注目し、ビジネス環境を改善するため、続々と支援策を打ち出した。同市税務局によると、個人所得税や増値税の減税策を企業に活用してもらうように努力した結果、2019年第1四半期に製造業の減税額は39億元と、市の減税総額の27.1%に達した。

工場の賃料の上昇を抑えるため、深セン市住宅建設局は2019年5月に「産業用賃貸市場価格を安定させる若干措置」の制定に当たり、パブリックコメントを募集し、上昇の要因となる、産業用物件を取り扱う資格を取得していない不動産仲介業者および個人による転貸借の禁止や賃料ガイドラインの発布などを検討している。

同市人民代表大会常務委員会は前出の特別報告を最初に審議した際に、各社区(注2)に散在している建物を工場に改造し、相場より低い料金で重点支援産業のメーカーへ提供することを提案した(「南方都市報」6月27日)。

(注1)年間売上高2,000万元以上の工業企業。

(注2)中国の都市部における住宅地の管理区画。

(盧真)

(中国)

ビジネス短信 d5e68958450aef11