ドイツ産業団体、ジョンソン新英国首相の就任に警戒感

(ドイツ、英国、EU)

デュッセルドルフ発

2019年07月25日

英国でボリス・ジョンソン氏が新首相となったことを受け、ドイツの経済団体は、英国の合意なきEU離脱(ノー・ディール・ブレグジット)リスクの高まりに対する警戒感を示すとともに、ドイツ企業に対し、10月末の合意なき離脱に備えるよう呼び掛けている。

ドイツ産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング事務局長は7月23日、「離脱協定案の再交渉は認められてはならない。貿易における摩擦を可能な限り抑え、かつ安定した国境情勢、そして双方の労働者の権利保証という観点から、既に合意済みの離脱協定案が最良の選択だ」との見方を示した。さらに、「EUから無秩序に離脱するという英国政府の脅しは有害で、かつ既に経済に与えた損害を拡大させるものだ」と指摘した。

ドイツ卸・貿易業協会(BGA)のホルガー・ビングマン会長は「今後の交渉において、EUはこれまでの決断に対する責任を負うべき」と離脱協定の内容の修正に応じることを牽制した一方、合意なき離脱が回避される場合には離脱期限の延長も視野に入れる必要があるとし、合意なき離脱の回避を強く求める声明を発表した。また、ドイツ機械工業連盟(VDMA)のティロ・ブロートマン事務局長も、ジョンソン氏が唱える強硬離脱の方針に警戒感を示すとともに、「英国のEU離脱の混迷が欧州中、特に英国における雇用や経済的な繁栄に影響を与える点について、英国首相は責任を自覚しなければならない」と指摘。さらに、「英国が現在の離脱協定案に同意し、移行期間中に将来の貿易関係について建設的な議論が行われることを期待し続ける」とした。

なお、ケルン経済研究所(IWケルン)も7月23日、英国離脱に関する不安定な情勢やポンド安が既に独英貿易に影響を及ぼしたとの調査結果を発表した。調査結果によると、英国がEU離脱を決める前の2015年と比べて2018年におけるドイツからEU域内への輸出は12.4%増加したのに対し、対英国の輸出は7.8%減少したという。また、英国からの輸入についても3.5%減少している。特に独英間貿易の約4分の1を占める乗用車・自動車部品では、ドイツの対英国の輸出および輸入がそれぞれ22.7%、13.6%減少した(表参照)。さらに医薬品は、対英国輸出が41.5%減と大きく落ち込んだという。本調査を発表したIWケルンのベルトルト・ブッシュ氏は「これらは英国とドイツの間において、企業間取引が密接に関連している産業で、今回の結果は英国とドイツのバリューチェーンの再構築が既に進行中であることを示している」としている。

表 主要製品における独英間貿易の経過

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(ドイツ、英国、EU)

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