対メルコスール輸出拡大を狙う欧州自動車産業

(EU、メルコスール)

ブリュッセル発

2019年07月02日

欧州自動車工業会(ACEA)は7月1日、「EU・メルコスール自由貿易協定(FTA)」についての政治合意(2019年7月1日記事参照)を支持する旨の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した。「妥当な競争条件の下で、メルコスール市場には欧州自動車産業にとって、人口・GDPの両面で真の成長のポテンシャルがある」と述べ、市場参入強化の好機と捉えている。

メルコスール市場参入に期待にじませる欧州企業

ACEAによれば、2018年のメルコスール市場の新車販売台数は約330万台だったが、輸入車の割合は30万台程度(1割程度)。このうち、EUからの輸出台数は7万3,000台で、市場全体に占める割合は2.2%にとどまっているという。

ブラジルとアルゼンチンにおける自動車に対する関税率は現在最大35%で、関税削減・撤廃はEU、メルコスール双方の自動車メーカーに利益となるとACEAは指摘する。また、EUの自動車部品産業も、メルコスール域内に立地する自動車メーカーに対して、特恵関税を適用して輸出できることによる恩恵が得られるとしている。

また、非関税分野では、同協定によって、国際的な国連基準への準拠が認証されている自動車輸入を、メルコスール側が認めることを担保することになるとの認識を示し、メルコスール市場参入に向けた欧州自動車産業の期待感をにじませた。

ACEAのエリック・ヨナー事務局長は「世界貿易を取り巻く厳しい情勢にもかかわらず、今回の合意はEUが野心的な通商関係を望み、それに伴う責務を果たすことを明らかにした」と述べた。

また、欧州の流通事業者系産業団体のユーロコマースは7月1日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、同協定を支持し、「関税低減(撤廃)」「税関手続き簡素化」「(国際基準に)整合する技術基準」などの効果で、欧州流通事業者がEUの生産者の対メルコスール輸出をサポートしやすくなると指摘した。このほか、EUの高品質食品などに対する357の地理的表示(GI)が保護されることについても、同協定の成果として評価した。

(前田篤穂)

(EU、メルコスール)

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