EVベンチャーの上海蔚来汽車(NIO)、バッテリー発火でリコール

(中国)

広州発

2019年07月10日

中国の新エネルギー車ベンチャーの上海蔚来汽車(NIO)は6月27日、スポーツ用多目的車(SUV)タイプのバッテリーEV(電気自動車)「ES8」のリコールを発表した。上海市で発生したES8の発火事故を受けたもの。対象は2018年4月2日から10月19日までに生産された4,803台。

中国の新エネルギー車ベンチャーでは初のリコールとみられ、リコール費用は約5億元(約80億円、1元=約16円)と報じられている(「広州日報」7月4日)。

電池モジュールが原因と発表

ES8に関しては、4月22日に陝西省西安市、5月16日に上海市、6月14日に湖北省武漢市で発火(発煙)事故が発生している。蔚来は発火の原因について、ES8のバッテリーパックに搭載している「NEV-P50タイプ」のバッテリーモジュールの配線が不適切なため、カバーによる圧迫が生じ、絶縁体が破損することでショートしたためとしている。

なお、対象期間以降に生産された車両は、発火したものとは設計が異なる「NEV-P102タイプ」のバッテリーモジュールを使用しているため、危険性はないとしている。

サプライヤーの発表は食い違い

NEV-P50タイプのバッテリーモジュールについては、中国バッテリー大手の寧徳時代科技(本社:福建省)がオーダーメードで供給しており、蔚来はバッテリーパックを設計している。発火事故については、寧徳時代も声明を発表しているが、原因は「バッテリーモジュールの構造とバッテリーパックが干渉したため」と表現しており、バッテリーモジュールの配線の不備は挙げていない。

政府も対策を要求

4月には上海市で米国テスラのEVも発火事故を起こすなど、中国では同様の事故が相次いでいる。国家市場監督管理総局は3月15日に「新エネルギー車リコール管理のさらなる強化に関する通知」(市監質函[2019]531号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、2018年以降に発生した発火事故などの原因の分析・報告を求めるとともに、部品企業、自動車メーカーいずれに対しても、問題が発生した場合にはリコールなどの対応を強化するよう要求している。また、工業情報化部は6月17日に「新エネルギー車安全リスク検査業務の展開に関する通知」(装備中心[2019]520号)を発表し、自動車メーカーなどに対し、生産した新エネルギー車の安全リスク検査を行うよう要求している。

(河野円洋)

(中国)

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