G20で日米などと首脳会談、2020年から日ロ地域交流年の開始を発表

(ロシア、日本、米国)

モスクワ発

2019年07月17日

プーチン大統領は6月28日、29日、G20大阪サミット(首脳会議)に出席のため訪日、期間中に日本、米国、英国、トルコ、サウジアラビアなどと首脳会談を行った。

29日の日ロ首脳会談後、安倍晋三首相とプーチン大統領が共同記者発表を行い、三井物産と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によるガス大手ノワテクが計画するアークティックLNG2事業への参画、キヤノンメディカルシステムズと医薬品大手Rファルムによるロシアでのキヤノン製医用画像診断装置の販売と将来的な現地生産を視野に入れた枠組み同意書締結などを発表した。また、両首脳は首脳会談に先立ち、2018年から始まった日ロ交流年の閉会式に出席、2020~2021年に日ロ地域・姉妹都市交流年を実施することで合意したと発表した。

28日にはロ米首脳会談が行われた。西側メディアは、トランプ大統領がプーチン大統領に選挙介入しないよう投げかけた発言を大きく報じた(2019年7月3日記事参照)。ロシアのメディアでも報じられたが、ドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、1週間のプーチン大統領の活動を紹介するテレビ番組「モスクワ・クレムリン・プーチン」(6月30日)に出演し、トランプ大統領が会談の中で、米ロ間の貿易規模がロ中間と比べて小さいことに遺憾の意を表したと明らかにした。トランプ大統領はその場でスティーブ・ムニューシン米国財務長官に、ロシア側とともに経済関係発展の阻害要因を確かめるよう指示したという。ロシアのマクシム・オレシキン経済発展相はロ米会談後、記者に対し、「(貿易拡大の)ポテンシャルはある。しかし実現できるかは米国次第だ」と述べた(「タス通信」6月29日)。

G20サミットのテーマの1つだったデジタル経済については、28日に大阪で別途開催したBRICS首脳会議でも取り上げられ、プーチン大統領は関係国に対し、情報通信や人工知能(AI)分野での協力を提案した。G20サミット後の記者会見でプーチン大統領は、G20首脳がデジタル化やAI開発の分野に関する共同の決定を首脳宣言で行ったことを評価した。

政府系メディア「ロシア・セボードニャ」は7月1日にG20サミットに関する専門家による討論会を開催した。この中で、ロシア・モスクワ国立大学のアンドレイ・シドロフ国際機関・世界政治過程学部長はロ米関係にポジティブな兆候が感じられたと指摘した。「ブレークスルーではないが、双方の首脳が部下に対してさまざまな分野で指示を出していた」と、その理由を述べた。

注目されていた米中関係について、ロシア科学アカデミー極東研究所ロ中関係研究予測センターのアンドレイ・ダブィドフ主任研究員は、さらなる米中対立は回避されたが、「本質的な対立は米国もしくは中国が新しく形成される世界秩序の主導権を握るまで続くだろう」と述べた。

(エカテリーナ・セミョノワ、浅元薫哉)

(ロシア、日本、米国)

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