米産業界、USMCA早期批准に向けて議会に働き掛け

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2019年07月29日

米国の産業界は議会に対して、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の早期批准を積極的に働き掛けている。米商工会議所をはじめとする600以上の業界団体は7月23日に、米連邦議会に対してUSMCAの早期批准を求める書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送った。これに加え、多数の米企業・業界団体が加盟するUSMCA連合は、7月24~25日に、100人以上の産業界幹部を率いて連邦議員らに直接、早期批准を働き掛けた。

今回の動きを主導したビジネスラウンドテーブルの副会長を務めるポール・ディレイニー氏は「新民主党連合(注1)、民主党ブルー・ドッグ連合(注2)、共和党議員、(メキシコと)国境を接する州の議員とも面談を行った。われわれは意図して、さまざまなグループの議員と会った」と、民主党議員にも働き掛けた点を強調している(政治専門誌「ザ・ヒル」7月25日)。

USMCAの実施法案はまず、下院で審議が行われる。民主党が多数を占める中で、可決されるかが焦点だ。現在、下院の全435議席中、民主党が235議席、共和党が197議席、独立党派が1議席、空席が2議席(注3)となっている。法案を可決するには過半数の218議席以上が必要となるが、共和党議員全員が賛成票を投じ、独立党派と現在空席の合計3議席を取り込めたとしても、少なくとも民主党から18議員の賛成を取り付ける必要がある。

ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のゲイリー・ハフバウアー上席研究員らが5月15日に発表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、メキシコとカナダへの輸出が経済を支えている割合が高い選挙区選出の議員は民主党であっても、USMCA批准に賛成票を投じる可能性があるとし、その条件に該当する民主党議員は21人存在するとしている。USMCAを支持するヘンリー・クエラー下院議員(民主党、テキサス州)は7月24日にワシントンで開催されたビジネスイベントで、少なくとも2015年大統領貿易促進権限(TPA)法可決に賛成した28人の民主党議員はUSMCAを支持するとの見方を示した上で、「2019年中に(USMCAは)批准されるだろう」と発言している(通商専門誌「インサイドUSトレード」7月28日)。9月以降、下院での法案提出権限を持つナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア州)の言動に注目が集まる。

(注1)下院民主党議員103人で構成される部会で、経済成長、イノベーション促進、税制規律のとれた政策を重視し、党派にとらわれない解決志向型の政治を追求するとしている。トランプ大統領によるTPP離脱を批判するなど、ルールに基づく自由貿易経済圏の形成も支持している。

(注2)下院民主党議員27人で構成される部会で、財政の安定性と国家安全保障の強化を重視し、党派や個人の利益にとらわれない実利的な政治を追求するとしている。

(注3)ノースカロライナ州の第3選挙区と第9選挙区が空席となっており、特別補欠選挙が2019年9月10日に行われる予定になっている。

(磯部真一)

(米国、カナダ、メキシコ)

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