ENISA、EUのICT産業政策に関する意見を公募

(EU)

ブリュッセル発

2019年07月12日

欧州ネットワーク情報セキュリティー庁(ENISA)は7月10日、EUの情報通信技術(ICT)産業政策に関する文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、8月31日までパブリック・コンサルテーション(公開諮問)を開始した。この文書は、政策の改善とサイバーセキュリティー産業の発展を見据えて、サイバーセキュリティーの観点からEUのICT産業政策の長所と不足点を検討したもの。デジタル分野での主権性や欧州におけるサイバーセキュリティー関連製品のサプライチェーンの問題について掘り下げるとともに、ICT市場とサイバーセキュリティー市場の関係をグローバルに概観している。今回のパブリック・コンサルテーションでは、市民や民間・公的部門の利害関係者に対し、欧州のICT・サイバーセキュリティー市場をいかに理解し、改善し得るかの意見公募をしている。

米国・アジア勢の拡大に危機感

ENISAは、グローバルなICT市場でEUは米国勢とアジア勢に挟み込まれているとの見方を提示。アナログ通信やGSMなど移動体通信技術では優位を保っていたが、近年、第5世代移動通信システム(5G)でアジアなどの域外サプライヤーとの競合にさらされていると指摘。また、EUの移動通信端末メーカーがアジアや米国との競争にさらされているのに加えて、ICT分野の成功企業の多くが域外の大企業に買収されていると懸念を示した。さらに、EUが掲げる価値観は、EUだけでなく、競合相手も共有しなければ、市民や企業のデジタル分野の主権性を保証し得るものではなく、EUは競合において不利な状況におかれ得ることを示唆した。

文書のうち、市民および民間・公的部門の利害関係者に向けた設問は、「ICT・サイバーセキュリティー市場について、競争政策や法制度、法解釈を見直す必要があるか」「サイバーセキュリティー関連企業の財務状況と成長力の改善のために何をし得るか」など全8項目。パブリック・コンサルテーションの結果は、欧州委員会の新体制(2019年11月に発足予定)と欧州議会に議論の材料として提供するという。

(村岡有)

(EU)

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