農業団体が欧州議会選挙結果を総括、今後の方針示す

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年06月06日

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体であるCOPA-COGECAは6月3日、農業の視点から欧州議会選挙結果(2019年5月27日記事参照)を総括する声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を出した。EU新体制に対する期待感を表明するとともに、大幅な政策転換には難色を示した。

対メルコスールFTAには警戒感示す

COPA-COGECAは今回の欧州議会選挙で「(EUの農業政策に)高い見識があり積極的に取り組んできた多くの欧州議員が落選したが、代わりに、農業従事者や農学者を含む農業に関する知識を持つ新議員が誕生したことはうれしい驚きだ。しかしこれは偶然ではなく、欧州の農業コミュニティーが60年以上、EUの共通農業政策(CAP)に貢献してきたたまもの」とした。その上で、「最優先の課題はCAPの改革」だと指摘した。

同団体は、既に5月17日付の声明(2019年5月20日記事参照)で、選挙後を見据えた政策提言を行っている。今回は、これまでのEUの政策に大幅な軌道修正が掛けられることに難色を示した。声明では「親EU勢力を主軸とする新体制下で、これまでの政策論議に変化がもたらされ、目を引く政策が打ち出されるだろう。しかし、通商をめぐって国際的な緊張状態にある中、EUの農業生産者は長期的な視点に立った、安定的な政策の枠組みを求めている」として、不要な政策転換を控え、慎重な政策運営を進めるべきとの考えを示唆した。

英国のEU離脱(ブレグジット)問題については、次期EU機構として今後の展開を注視し、適切に対応することを求めた。特に、EU予算審議にブレグジットをめぐる動きが影響する可能性があることにも言及。適切な予算の前提がない状態で、CAP改革を進めることが難しいことも指摘した。

また、通商政策に関連して、EUとメルコスールの自由貿易協定(FTA)の協議について、同団体は当面、妥結に欧州議員として反対すべきとの考えを示した。その論拠として、メルコスールを構成するブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領(政権)が最近認可した150以上の農薬について、EU域内では使用が認められていない点を挙げ、そうした農薬を使用した可能性のある農産品の対EU輸入拡大に警戒感をあらわにしている。

欧州委員会委員長を含むEU首脳人事については、6月20、21日に予定されている次回欧州理事会(EU首脳会議)で絞り込まれるとの見通しを示し、同団体の利害に直接影響する農業・農村開発担当欧州委員ポストには、「(フィル・ホーガン)現委員の政策を継承できる、農業分野において強力で明確なビジョンを持ち、現実的な対応を担える人材登用」を求めた。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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