欧州議会選、与党の「法と正義(PiS)」が躍進

(ポーランド、EU)

ワルシャワ発

2019年06月05日

ポーランドで5月26日に実施された欧州議会選挙は、投票率が45.68%で、これまでポーランドで実施された欧州議会選挙で最も高い水準となった(前回2014年:23.83%)。前回と比べ、特に地方での投票率が伸びた。与党「法と正義(PiS)」が得票率45.38%で27議席(改選前:14議席)を獲得して首位に立ち、欧州議会選挙に向けて最大野党「市民プラットフォーム(PO)」や「農民党(PSL)」「統一左派(SLD)」などの野党で結成された「欧州連合(KE)」が得票率38.47%で22議席〔新たに結成された連合のため現在、連合としての議席はなし(注)〕と続いた。2019年2月に結成された左派の新党「春」は得票率6.06%、3議席を獲得した。

5月下旬に実施された大部分の世論調査で、PiSはおおむね1~4ポイント程度KEをリードしていたが、実際の選挙結果ではPiSが約7ポイント差での勝利となった。ポーランドにおいて今回の選挙は、対EU政策ではなく、国内政策が主な焦点として争われ、複数の政党から成るKEはPiSに比べ、具体的な政策を打ち出すことができなかったとされる。新党「春」の得票数も事前の予想より伸びなかった。

ポーランドの13選挙区のうち、KEの得票数がPiSを上回ったのは、グダンスク、ビドゴシュチ、ワルシャワ(マゾビエツキ県のワルシャワ近隣郡も含む)、ポズナン、ブロツワフ、ゴジュフ・ビエルコポルスキの6選挙区で、ワルシャワ以外はポーランド西部の選挙区に集中している。今回の結果で特徴的だったのは、PO支持の傾向が強いポーランド西部の選挙区に属する郡でも、PiSの候補者が最多得票数を獲得して選出される郡が大都市部から離れた郡を中心に複数出たことで、報道では8割以上の郡でPiSが勝利したとされる。これまで欧州議会選で投票者が少なかった郊外や地方(PiS支持が強い)での投票率が上昇し、今回の欧州議会選では全体の投票率が高くなったことが、KEの得票率が伸び悩むことにつながったとの見方もある(「ポリティカ・インサイト」紙)。

今回の欧州議会選挙の結果を受け、2019秋に予定される国政選挙でも、PiSが優勢になるとの見方がされている。欧州議会選に向けて結成されたKEが国政選挙でも連立を組むかは現時点では不明で、仮に連立を組んだとしても、PiSに対抗するには、KEとしての明確な政策を打ち出す必要があると指摘されている。

(注)前回の欧州議会選挙では連合を組まず、別々の政党として戦った。改選前の議席は、PO18議席、PSL4議席、SLD3議席。

(深谷薫、ニーナ・ルッベ・ルビニスカ)

(ポーランド、EU)

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