欧州議会選は野党・国民自由党が勝利、在外ルーマニア人票が存在感示す

(ルーマニア、EU)

ブカレスト発

2019年06月03日

ルーマニアの欧州議会選挙は5月26日に実施され、32議席をめぐる選挙戦が行われた。野党で右派・リベラル政党の国民自由党(PNL)が議席を6から10(得票率:26.7%)に伸ばし、16から8(22.9%)に議席数を半減させた与党で左派の社会民主党(PSD)に勝利した(表参照)。また、新興政党の「ルーマニア救出同盟+自由統一連帯党(USR+PLUS)」も8議席(21.5%)を獲得し、第三極に躍り出ている。

今回の選挙におけるルーマニアの投票率は51.1%で、前回2014年の32.4%を大きく上回った。国内では、職権乱用などで有罪判決を受けたPSDのリビウ・ドラグネア党首らに恩赦を与える「司法および刑法改正」が議論を呼んでおり、今回の投票率の高さは国民の不満の蓄積が背景にあるとみられる。特に投票率が高かったのは、反PSD派が多いとされる首都ブカレストおよび近郊のイルフォフ県、ハンガリー国境に近い西部トランシルバニア地方の諸県。一方で、PSD支持層が多い農村部の投票率は比較的低かった。

また、在外ルーマニア人の票も大きな影響力がある。一般的に「ディアスポラ」と呼ばれる在外ルーマニア人は、西欧を中心として約360万人(2017年末時点、国連資料による)いるとされており、今回の欧州議会選挙でも35万7,000人以上が投票し、投票数全体の約4%を占めた。在外ルーマニア人の票が少なからずUSR+PLUSに流れたとみられる。同党は、2015年11月にルーマニア初のテクノクラート内閣を組閣したダチアン・チョロシュ元首相らのリーダーシップの下、初参加ながら与党PSDに大きく迫っている。

一方、在外ルーマニア人向けの投票環境には課題が残る。今回の選挙では、在外有権者向けの投票所数の少なさや投票手続きにかかる時間の長さから、ルーマニア人が長蛇の列をなす光景が欧州各地の主要都市で見られた。中には、5時間以上待たされた上、締め切り時間が過ぎて投票できなかった有権者もいたという。在外投票所を管轄するルーマニア外務省は、前回の2倍の441カ所に投票所を開設したと説明するが、結局はテオドル・ビオレル・メレシュカヌ外相が謝罪する事態に至った。このような問題は、2014年の欧州議会選挙や大統領選挙でも起こっており、有権者の中には、与党が遅延工作を図っているとの見方をするものも少なくない。これら一連の政府対応について、USR+PLUSは内閣解散を要求するなど、政局は混迷している。

表 欧州議会選挙の結果

(水野桂輔)

(ルーマニア、EU)

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