サンフランシスコ、市当局による顔認証監視技術の利用禁止へ

(米国)

サンフランシスコ発

2019年06月06日

サンフランシスコ市議会は5月21日、同市当局による顔認証監視技術の利用を禁止する条例案を最終的に可決した。現時点で、ロンドン・ブリード市長の署名待ちとなっている。条例化すれば、サンフランシスコ市は、顔認証監視技術を禁止する初めての米国主要都市となる。

この条例案は、サンフランシスコ市政府機関による顔認証監視技術を全面禁止するだけでなく、顔認証以外の監視技術に関して、以下の場合において前もって市議会に許可を得ることを求める。

  1. 監視技術取得のための資金調達をする場合
  2. 新たな監視技術を取得、あるいは借りる場合
  3. 新たに、あるいは既にある監視技術を「監視技術規則条例」で示されていない方法・場所で利用する場合
  4. 外部機関と、監視技術を取得する、共同利用する、あるいは利用するために契約を結ぶ場合
  5. 外部機関や個人から監視技術を通じて得たデータや情報を定期的に受けるための口頭・書面契約を結ぶ場合

この条例案の対象となるのは、サンフランシスコ市警察などの市当局としており、一般市民や民間企業の利用については条例文内で触れられていない。また、連邦規制が適用される空港や港湾は除外される。

同条例を提案したアーロン・ペスキン市議会議員らは条例案本文で、「監視技術は歴史的に特定の人種や特定の民族、宗教、出身国などで構成されるグループを脅かし、虐げるために利用されてきた。市民の権利と自由を脅かす顔認証技術の傾向はその利益とされるものを上回り、人種的偏見を悪化させる」と記述している。

米国における顔認証技術は、法執行機関で一般的になりつつあり、運転免許証の写真と犯罪者の顔写真データベースを照合する警察も多くある。米国自由人権協会(ACLU)が2018年に行ったアマゾンの顔認証ソフトのテスト結果によれば、同ソフトは、米国会議員28人を誤って犯罪者と判定した。ACLUは、全国会議員のうち、有色人種の議員は20%しかいないにもかかわらず、誤判定された28人のうち、約4割が有色人種だったと述べている。

このような顔認証技術を規制する動きは、他都市でも起こっており、サンフランシスコの東側対岸に位置するオークランド市のほか、マサチューセッツ州の市レベル(サマビル市)と州レベルでも、同様の条例案・州法案が議論されている。

(田中三保子)

(米国)

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