移動が容易な組立式建築物をつくるギャップテック

(スペイン)

マドリード発

2019年06月25日

ギャップテック(Gaptek)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますはスペイン・バルセロナに本社を置き、組立式の骨組みで建築物の建設およびメンテナンスを行う中小企業だ。スペイン空軍の「移動可能な格納庫(注)が存在すれば」という一言から着想を得て設立された2011年当時は、MRO(整備、補修、分解点検修理)用の移動式格納庫の建築・組立が主な事業だった。現在は、同社の組立式建築工法の用途は、ロジスティクスセンター、倉庫、仮設住宅、原子力発電所などに広がっている。同社のキー・アカウント・マネジャーのゴンザロ・ケベド氏に話を聞いた(6月6日)。

軽量で移動が容易、防水・防腐効果も

建築物の骨組みをまず、自社工場や提携先工場で製造し、目的地まで輸送し組み立てる。主な建築材料は炭素材料やアルミニウムだが、顧客の意向で他の材料に替えることも可能。アルミは防水・防腐機能が抜群で、重量が鉄鋼の30%しかない点で建築材料として優れている。組立式とすることで、建築に要する時間を半減でき、移動や撤去が容易になった。

写真 スペイン南部セビリアにあるエアバスA400M用格納庫(ギャップテック提供、同社が建設)

スペイン南部セビリアにあるエアバスA400M用格納庫(ギャップテック提供、同社が建設)

アフリカや南極でも実績

同社は欧州諸国で、原子力発電所での廃棄物の貯蔵倉庫のエンジニアリングプロジェクト、サラゴサ空港やイスタンブール空港におけるロジスティクスセンターを建設してきた。欧州以外でも、アフリカにおけるシェルターや南極における耐寒倉庫の建設などに携わり、19カ国以上で実績を持つ。

主な顧客は、スペインの防衛省・空軍・陸軍、NATO保守整備補給機関、米国防総省、欧州統合装備協力機関、エアバス・ディフェンス&スペース、ターキッシュエアラインズ、国境なき医師団など。

現在は航空、防衛、物流、社会インフラの4つの市場に注力し、技術開発を進めているが、今後の目標はこれらの市場をさらに強化し、このニッチな分野におけるベンチマーク企業として確立することと、自社技術に対するニーズがある新しい分野や市場を開拓することだ。「ギャップテックは、伝統的な建築業界における『仕事を実行する』という概念を『製品をつくる』ことへと変えた。この点に、大きな関心が寄せられるだろう」とケベド氏は語った。

写真 ターキッシュエアラインズのロジスティクスセンター(ギャップテック提供、同社がイスタンブール空港内に建設中)

ターキッシュエアラインズのロジスティクスセンター(ギャップテック提供、同社がイスタンブール空港内に建設中)

写真 南極におけるスペイン基地「ガブリエル・デ・カスティージャ」の耐寒倉庫(ギャップテック提供、同社が建設)

南極におけるスペイン基地「ガブリエル・デ・カスティージャ」の耐寒倉庫(ギャップテック提供、同社が建設)

地震大国日本の市場に関心寄せる

同社は、米国において日本の航空機内装品の大手メーカーと提携し、米国とモンゴルで共同プロジェクトを実施した経験から、日本における空港民営化の機運を捉え日本進出を考えるようになった。同社のモジュール式建築は、日本の木造建築の組み立て文化からも影響を受けたようだ。「建築と解体が容易にできるわれわれの技術は、建築用スペースが不足し、地震など自然災害が多い日本市場に向いていると考える」とケベド氏は話す。現在は、本格的な進出を検討する前段階として、日本で市場調査およびパートナー探しをしているところだ。

(注)航空機を風雨や砂塵(さじん)などから守り、整備や補給、待機などを行う。

(高文寧)

(スペイン)

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