サウジアラビアで「名探偵コナン」が劇場公開

(サウジアラビア)

リヤド発

2019年06月19日

日本のアニメ映画「名探偵コナン 紺青の拳」が6月13日に、サウジアラビアのドバイ系VOXシネマで劇場公開された(日本語音声、アラビア語・英語字幕)。VOXシネマが展開する中東諸国のうち、同日に公開が始まったのは湾岸協力会議(GCC)諸国。配給は、アニメ専門チャンネルSpacetoonの子会社Spacetoon Picturesが行っている。

サウジアラビアでは、2018年4月に映画館の開設が解禁となったばかりで、これまで米国マーベル(Marvel)コミックシリーズなどのヒーローものが主流だったが、2019年は夏休みシーズンに入ったこともあり、米国イルミネーション・エンターテインメント配給の「ペット2」が既に公開されているほか、ディズニー配給の「トイ・ストーリー4」も6月下旬に公開予定だ。日本のアニメが劇場で公開されるのは2019年2月の「ドラゴンボール」に続き、本作が2作目。

当地のVOXシネマでは、女性・子供を含む「ファミリー」専用の回と、男性のみとなる「シングル」専用の回とが上映時間ごとに分かれている。筆者が「名探偵コナン」劇場公開直後の週末、ファミリー専用回に実際に足を運んでみたところ、通常はまだ客の出足が遅い午後の早めの時間帯ながら、40席ほどのミニシアターがほぼ埋まっていた。吹き替えでないこともあってか、客層は子供は少なく、若い女性のグループがほとんどだった。「日本のアニメが大好き」と明るく話す来場者のサウジアラビア人女性(高校生)は、体系的な日本語学習の経験や日本留学経験がないにもかかわらず、日本語を流ちょうに話すのが印象的だった。

サウジアラビアの消費市場や家電市場などでは中国、韓国勢が存在感を表しているものの、コンテンツ市場では若年層から中高年まで日本のアニメが根強い人気を誇り、日本勢が強みを持つ市場の1つだ。当地では前述の女性のように、学問としての日本語学習者ではないものの、アニメなどコンテンツを通じて日本に親近感を持つ層が若者を中心に意外に厚いことに驚かされる。

ジェトロが実施したエンターテインメント市場調査によると、サウジアラビアにおけるシネマ市場の市場価値は2023年に1,900万ドルになると予測されている。これに、今後拡大が予想されるオンライン・アニメ配信なども加えると、コンテンツ市場の潜在性は高い。

日本との関係では、2018年に東映アニメーションと当地マンガプロダクションが合作テレビアニメ「きこりと宝物」を製作したほか、両社で2020年公開予定の長編劇場アニメ「ジャーニー」を製作中と報じられている。

(柴田美穂)

(サウジアラビア)

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