失業保険制度の改正を発表、受給資格条件が厳格化

(フランス)

パリ発

2019年06月21日

フランスのミュリエル・ペニコ労働相は、6月17日に失業保険制度の改正を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、翌18日にエドアール・フィリップ首相とともに記者会見を行った。2021年末までに34億ユーロの失業保険の赤字を節減し、15万~25万人の失業者の削減を目指す。

具体的には、11月から失業保険の受給資格条件を厳しくし、失業手当の受給資格条件を現行の「直近28カ月間に4カ月の就労」から「直近24カ月間に6カ月の就労」に変更する。57歳未満で額面給与が4,500ユーロを超えていた失業者の受給額は、2,261ユーロを下限として7カ月目に30%削減する。

2020年1月には、雇用を不安定にする有期労働契約(CDD、2018年11月「フランスの労務知識第4回労働契約PDFファイル(0.0B)」参照)や派遣労働者を多用する7つの産業部門の失業保険料の企業負担分に割増・割引制度を導入する。対象は、(1)食品製造業、(2)科学・技術事業・広告業、(3)宿泊・飲食業、(4)水処理・廃棄物処理業、(5)運輸・倉庫業、(6)ゴム・プラスチック・非金属製品製造業、(7)林業・製紙・印刷業、の従業員11人以上の企業。短期雇用者の利用の度合いに応じて、企業負担の失業保険率の4.05%を、3~5%の変動制とする(度合いが高いほど失業保険率も高くなる)。さらに、CDD d'usage(注)1件につき10ユーロ課徴する。

2020年4月から受給制度の計算方法を、就労時の月額平均に変更する。これまで受給額が給与を上回る場合があったが、受給額を給与の65~96%までに制限する。

今回発表の措置により、37億5,000万ユーロの節減となるが、3億5,000万ユーロは失業者支援対策の拡充に投入する。

全国商工業雇用組合(UNEDIC)の2018年11月の資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によれば、労使により共同運営されている失業保険の収支は、2019年には350億ユーロ超の累積赤字に達する見込みだ。年間10億~13億ユーロを節減するため、政府主導により開始された労使交渉は、CDDの乱用防止対策について合意に至らず、2019年2月に決裂。政府は「自ら作成する改正案を2019年夏にデクレ(政令)として発令する」と発表していた。

改正発表に対し、労働組合は一斉に反対の意を表明している。民主労働総同盟(CFDT)のベルジェ書記長は、今回の発表を「失業者が失うものが非常に大きく、社会的に不平等な改革」と述べた。

(注)特殊な有期雇用契約。特定の業界、および団体協約の締結により特別に認められた契約。

(奥山直子)

(フランス)

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