2019年地方別投資環境ランキング、地方間競争で投資環境改善との評価

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月20日

ロシアの連邦構成体(以下、地方)の投資環境改善の提言とモニタリングを行う政府関係機関の戦略イニシアチブ庁(ASI)は6月7日、2019年の地方別投資環境国家ランキングを発表した。首位はモスクワ市で、タタルスタン共和国、チュメニ州が続いた(表参照)。順位の変動はあるものの、上位3地方は2018年と同様だ。

ランキングは毎年、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF、2019年6月14日記事参照)で発表される(2018年5月31日記事参照)。当該セッションには、数多くの地方の首長が参加する。ランキング上位地方の首長はセッションでのコメントの機会が与えられるなど、ランキングは「地方の投資環境整備の成績表」ともいえるもの。a.政府サービスの質、b.ビジネス関連制度の効率性、c.インフラ整備(ハード、ソフトを含む)、d.中小企業支援、の4つの分野の44の指標で評価される。

同セッションには毎年、連邦政府の高官が参加するなど、地方の投資環境改善への取り組みに連邦政府として強い関心を有していることを示す。2019年は大統領府からベロウソフ経済担当補佐官、連邦政府からムトコ副首相(地方財政担当)が参加した。

ランキングのトップ3に続き、4位はカルーガ州(前年13位)、5位はサンクトペテルブルク市(4位)だった。カルーガ州は、州政府による工業団地整備や投資関連手続きの窓口一元化など、2000年代の外資誘致の先進地域で、評価の開始以来、常にトップを狙う位置に付けていた。2018年は初の「トップ10からの陥落」となったが、1年で返り咲いた。なお、同州にはプジョー・シトロエン・三菱、フォルクスワーゲン(VW)の自動車組み立て工場などが立地している。

ランキングの推移をみると、上位は比較的安定して推移する地方が多い。その一方で、大きく順位を上げるところもある。例えば、ロシア北西に位置するノブゴロド州は、前年から15順位を上げて14位にランクインした。スモレンスク州も初のトップ20入りを果たした。逆に、トップ20から陥落する地方もそれと同数出てくる。

表 地方投資環境国家ランキングの推移(2015~2019年)

カルーガ州の例をみて分かるように、投資環境整備の先頭集団を走る地方でも、他の地方がそれを上回る施策を打ち出せば、順位を下げる。ASIのスベトラーナ・チュプシェワ長官は「トップ20にランクインするのは年々難しくなっている。今年の20位前後の地方の投資環境整備状況をみると、昨年のトップ10と大差はない」とコメントし、地方間の競争が投資環境全般の改善に寄与しているとの見方を示した。

(梅津哲也)

(ロシア)

ビジネス短信 1a9c1087d261e269