野党は欧州議会選挙へ本格始動も、与党・保守党は混乱続く

(英国、EU)

ロンドン発

2019年05月10日

英国最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は5月9日、欧州議会選挙に向けた選挙キャンペーンを立ち上げた。同党首は英国のEU離脱(ブレグジット)について、「政府がブレグジットで完全に失敗したため、分断や不満の中、選挙が行われることになった」と政府を批判。同党に投票することが、英国の団結を回復させると訴えた。他方、党内で主張が二分している2度目の国民投票については、「政府合意と、合意なき離脱(ノー・ディール)の双方に反対し、労働党案に沿った合意も解散総選挙も実現しなければ、2度目の国民投票を支持する」と、従来の主張を繰り返すのにとどまった。英国での欧州議会選は、5月23日に行われる予定。英国の議席数は73議席。

5月2日の統一地方選挙(2019年5月7日記事参照)で躍進した自由民主党、緑の党なども、相次いで欧州議会選挙に向けた活動を本格化させている。両党とも、2度目の国民投票を経て、EU残留を実現することを明言。主要政党に先立ち、4月23日に選挙キャンペーンを発足させた新党のチェンジUKも、2度目の国民投票とEU残留を目指す。

これに対するEU離脱支持派では、英国独立党(UKIP)の元党首ナイジェル・ファラージ氏が4月に結成した新党のブレグジット党が支持を拡大している。英国調査会社ユーガブが4月29~30日に実施した世論調査で、同党は労働党の21%、保守党の13%を上回る30%の支持を獲得。ブレグジットを実現できない既存政党に不満を持つ離脱支持者の受け皿になっている。

最も厳しい状況にあるのは、与党・保守党だ。テレーザ・メイ首相は欧州議会選前に離脱協定案に対する議会承認を目指し、4月初旬から労働党との協議を続けてきた(2019年4月11日記事参照)。統一地方選で保守党・労働党ともに後退したことを受け、政府、労働党とも合意を急ぐとの観測も一時強まったが、EUとの関税同盟をめぐる溝が埋まらず、合意のめどは立っていない。首相はなお、欧州議会選前の離脱協定の議会承認を目指しているが、批准手続きが間に合わないことはほぼ確実で、デービッド・ リディントン内閣府担当相らは、英国が選挙に参加することは避けられないと明言している。大敗が予想される保守党は、正式な選挙キャンペーンやマニフェストの公表は行わないとの観測まで出ている。メイ首相の早期辞任を求める声も拡大しており、党内の混乱は続きそうだ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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