欧州議会選挙、与党が予想どおり勝利、反政府票は新興野党に流れる

(ハンガリー、EU)

ブダペスト発

2019年05月28日

ハンガリーの欧州議会選挙が5月26日に実施され、21議席を争った。結果は事前の予想どおり、与党連立政権のハンガリー市民同盟(フィデス)/キリスト教民主国民党(KDNP)が13議席(得票率:52.1%)を獲得し勝利した。現政権に反対する層の票は、既存野党から新興政党に流出し、既存野党に失望して新興政党への期待を高めるかたちとなった。投票率は過去最高の43.36%を記録した。

連立与党のフィデス/KDNPは堅い支持を得た。フィデスはEUによる権限拡大を非難し、移民受け入れ反対やキリスト教文化の保持を有権者に訴えてきた。オルバーン首相は今回の選挙結果はハンガリー国民の民意を示すものとし、EUの改革を求めていくとしている。同党は欧州議会で中道右派の欧州人民党(EPP)グループに所属するが、難民受け入れに寛容なEUやジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長を批判したことなどから、資格停止措置を受けている。今回の選挙結果を踏まえ、フィデスはEPPから離脱し国家主義的なグループと新たな会派を組む可能性がある。

野党の中道左派民主連合(DK)は、前回の2議席から4議席(16.2%)に議席を伸ばし、野党の中で最も躍進した。同党はジュルチャーニ・フィレンツ元首相〔社会党(現職当時)〕の妻ドブレブ氏を党首とする政党で、難民問題は過ぎ去ったものなどとして、フィデス/KDNPと異なる方針を打ち出し、「欧州合衆国構想」を有権者に訴えた。また、EUレベルで最低賃金制度や最低年金保障制度、さらには家族手当などを創立することを主張した。

政府批判を続けるリベラル政党のモメンタムは、現政権に反対する層の支持を得て、初めて議席(2議席、得票率9.9%)を得た。現政権の2024年オリンピック招致に反対して頭角を現した政党だが、まだ国会に議席はない。ただ、主張は西欧やグローバリズムの価値観に近いものがあり、資本家や高学歴、若手の支持を得ている。今回の勝利が今後の国内での政治活動にどう影響するか注目される。

一方で、既存の野党は求心力を失っている。極右政党のヨッビクは議席数を3から1(6.4%)に落とした。EU加盟国の尊厳や移民受け入れ反対、東方からの低賃金労働者の流入反対を訴えたが、地元メディアの分析によると、幅広い有権者の支持を得ようと、人権に配慮した穏健な主張を取り入れたことが裏目に出て、核となってきた支持者が離れた。また、環境政党の新しい政治の形(LMP)は、他国で環境政党が躍進する中、議席を失い惨敗となった。同党は2018年の国政選挙で敗北した際、党を主導していた幹部が辞任し、強力なリーダーが不在となっていた。

(バラジ・ラウラ、本田雅英)

(ハンガリー、EU)

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