パナマ大統領選挙は中道野党候補が勝利、ねじれ議会は解消へ

(パナマ)

米州課

2019年05月07日

中米のパナマで5月5日、大統領および国会議員、地方議員などを選出する総選挙が実施された。大統領選挙では、野党候補で中道・民主革命党(PRD)のラウレンティノ・コルティソ・コエン元農牧開発相(66歳)が勝利した。任期は2019年7月1日から5年間。なお、パナマでは大統領の再選は憲法で認められていないため、現職のフアン・カルロス・バレーラ大統領は立候補していない。また、全71議席を改選する国会議員選挙では、PRDが30議席に迫る第1党となる様相だ。バレーラ大統領の与党・パナメニスタ党は現在、議会第3党となっている。コルティソ候補の大統領就任後は、オマール・トリホス元大統領(任期2004~2009年)以来の与党第1党となり、ねじれ議会が解消される。

コルティソ氏は、各連合・政党からの大統領選挙立候補者選出予備選挙時から支持率が高く、調査会社のスタートマーク・コンスルトレスによると、2019年1~4月の支持率は43%を下回ることが1度もなく、選挙戦では最有力候補者だった。対抗馬とされたロムロ・ルークス元外相(民主変革党総裁)の支持率も23%を下回ることなく推移し、選挙前の予想ではコルティソ氏との事実上の一騎打ちだった。得票率は開票率99.1%時点で、コルティソ氏が33.3%、ルークス氏が31.0%と、パナマ大統領選挙史上で最も接戦となった(表参照)。なお、与党・パナメニスタ党候補のホセ・ブランドン現パナマ市長は4位に終わった。

表 大統領選挙の得票結果

有権者は現政権への批判から野党に投票

今回の総選挙の有権者数は約275万人で、投票率は73.0%と高かった。有権者は候補者の選挙公約よりも現政権への批判などから、野党候補に票を投じる傾向にある。つまり、バレーラ政権の汚職問題や治安悪化と格差拡大、ねじれ議会に起因する政策実行性の低さなどの諸問題の解消に期待したものだ。コルティソ氏は、競争力強化に基づく雇用創出と格差是正、教育や社会保障の拡充、汚職撲滅など、バレーラ政権が抱える問題の解決案を公約にしたことが、高い支持率を保った要因の1つだ。ただ、コルティソ氏は、2017年6月に中国と国交樹立をしたバレーラ政権の通商外交政策をおおむね引き継ぐ意向で、既に5回の実務者レベル会合が実施された中国との自由貿易協定(FTA)交渉の継続にも意欲を示している。

(志賀大祐)

(パナマ)

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