欧州議会選挙、親EUの労働党が第1党に

(オランダ、EU)

アムステルダム発

2019年05月28日

オランダの欧州議会選挙は5月23日に投票された。欧州各国で移民排斥や反EUの政党が台頭する中、オランダでは、3月の州議会選挙(上院の議席配分に直接影響)で躍進した反EUを掲げる新興政党の民主主義フォーラム(FvD)の動向が注目されていた。

5月27日午前1時28分時点の暫定結果では、親EUの労働党(PvdA)が得票率18.9%と、2014年の前回(9.4%)から倍増させ、前回比3議席増の6議席を獲得し、最多の議席を確保した(表参照)。中道左派の民主66(D66)などの支持者の一部がPvdAに投票したとみられている。多くのメディアは勝因について、同党のティーマーマンス氏の存在が大きな役割を果たしたとしている。同氏は元外相(第2次ルッテ政権)で、欧州委員会の第1副委員長として知名度を上げ、欧州議会でも第2会派の社会・民主進歩同盟グループの次期欧州委員長候補でもある。支持者の多くが「彼はEUでのオランダ代表」と見なしたようだ。

PvdAは、多国籍企業や大手IT企業などへの課税強化、移民労働者からの搾取撲滅などを目的とした最低賃金の導入などを訴えていた。

注目されていた反EUのFvDは今回、欧州議会選に初めて参加し、得票率10.9%で3議席を獲得した。同じく反EUの極右政党自由党(PVV)は得票率3.5%にとどまり、現有4議席を全て失うことになった。一部のPVV支持者がFvDへの投票に回る一方、多くが投票しなかったとの調査結果もある。

直前の世論調査では、FvD支持者の46%がEUの政策、役割をよく理解しているとし、EUの維持にかかる費用、加盟国への権限移譲などが関心事としており、必ずしも反EUではないとの結果も出ていたことが、FvDのさらなる議席積み上げにつながらなかったとみられる。

親EU政党のうち、ルッテ首相の自由民主国民党(VVD)は得票率14.6%で、3議席から4議席に増やした一方、キリスト教民主同盟(CDA)は12.1%で、5議席から4議席へ、D66は7.0%で、4議席から2議席に減少した。親EUの左派では、PvdAの躍進のほか、グリーンレフト(GL)は10.9%で、2議席から3議席に増加、社会党(SP)は3.4%で、現有の2議席を失うことになった。投票率は前回(37.9%)を上回る41.9%だった。

表 オランダの欧州議会選挙の政党別獲得議席数

(高橋由篤)

(オランダ、EU)

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