欧州議会選で五つ星運動が後退、右派野党は再編に意欲

(イタリア、EU)

ミラノ発

2019年05月30日

5月26日に行われた欧州議会選挙(イタリアの議席数:73)において、イタリアではマッテオ・サルビーニ副首相兼内相の率いる現与党の中道右派政党・同盟が得票率34.3%で最大の支持を集めた。28議席を獲得し、5議席から議席数を大幅に増やした。中道左派で前与党の民主党(PD)が22.7%(19議席)、現与党で第三極の五つ星運動が17.1%(14議席)、中道右派のフォルツァ・イタリア(FI)が8.8%(6議席)、同じく中道右派のイタリアの同胞(FDI)が6.4%(1議席)と続いた。

メディアは反移民・自国優先的主張を行う同盟の支持率の伸長について多く報じた一方、選挙結果を受けての各党の発言には、他党との関係を意識した内容が目立ち、あらためて勢力が分散した政治構造が浮き彫りになった。今後、連立与党の五つ星運動の支持率の低下を踏まえ、中道右派野党が、右派与党・同盟との関係再強化を模索する動きを強めると予想される。

同盟のサルビーニ党首は勝利を強調しつつ、欧州における財政ルールの改革を強く求める立場を表明する一方、五つ星運動との連立関係には変更がないことを表明した。欧州議会では異なるグループに属し、インフラ投資や福祉政策をめぐっては方針の相違もみられる両党だが、連立については現状維持を念頭に置いた慎重な発言となった。

FIのシルビオ・ベルルスコーニ党首は結果が低調だったことを認めつつも、中道右派ブロックで一定の勢力を有する自党の存在が不可欠とし、五つ星運動の低迷を踏まえ、他の中道右派政党との関係再構築が必要だと言明した。なお同氏は、脱税での有罪判決による欠格状態から2018年に被選挙資格を回復し、健康問題を抱えつつも今回の欧州議会選挙に立候補し、当選を果たした。

また、FDIも右派勢力の再構築の可能性に関する意欲を示している。

PDのニコラ・ジンガレッティ党首は、2018年の総選挙から5ポイントほど得票率を回復した今回選挙の結果を評価し、同盟との差別化を強調しつつ、欧州議会における多数勢力として政治参画する姿勢を表明した。

五つ星運動は、支持率低下(2018年総選挙の得票率は32.7%)が明確となった。経済的に低調な南部では最大支持を獲得したが、北部と中部ではPDを下回った。五つ星運動リーダーで副首相兼経済開発相のルイジ・ディマイオ氏は結果を謙虚に受け止めるとしつつ、連立相手である同盟の選挙結果に祝意を表するなど、現政権における影響力維持を意識する発言が目立った。

(山内正史)

(イタリア、EU)

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