フェルナンデス前大統領、副大統領としての立候補を発表

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年05月23日

アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス・キルチネル前大統領は5月18日、自身のツイッターで、10月27日に予定されている大統領選挙に副大統領として立候補する予定であることを発表した。

フェルナンデス前大統領は発表の冒頭、5月18日が1810年に始まったアルゼンチン独立戦争の出発点となる5月革命の初日であること、革命記念日となる5月25日がフェルナンデス氏の前任大統領で夫でもあるネストル・カルロス・キルチネル氏の大統領就任日であることに触れた。さらに、マウリシオ・マクリ現政権が国の借金を増やし、国民を貧困に導いていること、自身にまつわる疑惑に関する虚言を展開していることを批判し、国益を優先した国の再建の必要性を強調した。その中で、大統領候補をアルベルト・アンヘル・フェルナンデス元首相とし、自らは副大統領になる意思を表明した。

これまでクリスティーナ・フェルナンデス前大統領は、ペロン党急進派の大統領候補と目されており、4月下旬に実施された調査会社フェデリコ・ゴンサレス&アソシアドスによる世論調査でも、30.3%と最も高い支持率を獲得した。2位のマクリ大統領(25.0%)の再選に立ちはだかる有力な対立候補とみられていた。

アルベルト・フェルナンデス元首相は、2003年のネストル・カルロス・キルチネル政権発足時からクリスティーナ・フェルナンデス大統領時の2008年7月まで首相を務めてきた。今回の大統領候補としての指名の背景にはさまざまな臆測が伝えられている。その1つとして、現在三つどもえの様相を見せている大統領選において一翼を担うペロン党穏健派の取り込みがあるとも言われている(表参照)。

表 2019年大統領選を取り巻く構図

ペロン党穏健派の大統領候補では、セルヒオ・マッサ氏がアルベルト・フェルナンデス元首相の後任、ロベルト・ラバーニャ氏がネストル・カルロス・キルチネル元大統領時の経済財務相と、少なからず接点を有する。また、アルベルト・フェルナンデス元首相はマッサ氏が2015年の大統領選を戦った際の選挙対策責任者でもある。10月の大統領選は決選投票に持ち込まれる可能性が高く、ペロン党急進派がペロン党穏健派の取り込みに向けて先手を打ったともみられている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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