第1四半期のGDP成長率を発表、ブレグジットの影響も

(英国)

ロンドン発

2019年05月24日

英国政府統計局(ONS)の5月10日の発表によると、2019年第1四半期(1~3月期)の実質GDP成長率(速報値)は前期比0.5%、前年同期比1.8%となり、いずれも、2018年第4四半期(10~12月)の成長率(前期比0.2%、前年同期比1.4%)を上回った(図参照)。

図 英国の四半期別GDP成長率の推移

GDPの63%を占める個人消費は、前期比0.7%増、前年同期比1.9%増となり、堅調な伸びを示した(表参照)。またONSの小売業統計によると、同期の小売業の売り上げは金額ベースで前期比1.6%増、前年同期比5.4%増、数量ベースではそれぞれ1.6%増、5.0%増となった。

表 英国の実質GDP成長率〔前年(同期)比〕の推移

産業別では、製造業も前期比2.2%増、前年同期比1.2%増となり、成長に寄与した。当初は3月29日に予定されていた英国のEU離脱(ブレグジット)の目前であり、企業が在庫を積み増したことが主な要因。ただ、在庫積み増しの相応部分は輸入によっており、この間の貿易赤字(非通貨金などを除く)は19億ポンド(約2,641億円、1ポンド=約139円)拡大し、122億ポンドに急増している。他方、サービス業では流通・ホテル・レストラン(前期比1.1%増、前年同期比4.3%増)、運輸・倉庫・通信(0.7%増、4.5%増)などが好調だったが、ビジネスサービス・金融(0.0%増、0.9%増)などは伸び悩み、全体ではそれぞれ0.3%増、2.0%増となった。

企業の設備投資は、前年同期比では1.4%の減少となったが、前期比では0.5%増加し、5期ぶりにプラスに転じている。

公的部門も成長に寄与した。政府消費は前期比1.4%増、前年同期比2.2%増となり、政府の一般公共投資もそれぞれ8.1%増、14.4%増を記録した。

堅調な成長を見た第1四半期だが、ブレグジットによる不透明感が第2四半期(4~6月)以降の英国経済に影を落とす。イングランド銀行(中央銀行)は、特に製造業の投資意欲がブレグジットにより急減していると指摘。在庫積み増しが相殺したものの、欧州や中国など輸出市場の需要減もあり、工業製品の輸出は低迷している。ドイツの調査会社GfKが発表した4月の英国の消費者信頼感指数は、前月と同じマイナス13ポイントとなった。同社が毎月実施している消費者の懸案事項に関する調査では、3月に「ブレグジット」との回答が初めて首位となり、ブレグジットが企業側だけでなく、消費者にもマイナスの影響を与えていることが浮き彫りになった。

(宮崎拓)

(英国)

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