輸出の悪化、タイ経済を下押す

(タイ)

バンコク発

2019年05月31日

タイ国家経済社会開発庁(NESDC)は5月21日、2019年の経済成長率の見通しを「前年比3.3~3.8%」とし、2018年末に発表した「前年比3.5~4.5%」から下方修正した。昨今の世界経済の減速による景況感の悪化を受けたもの。タイ商工会議所大学が公表した見通しも、3.8%から3.5%へと下方修正された。

各種機関が成長率見通しを下方修正した要因は、輸出の悪化だ。外需依存度が高いタイにとって、輸出は最も重要な経済の牽引力だが、タイ商務省が5月22日公表した4月の貿易統計によると、4月単月の輸出額は前年同月比2.57%減と2カ月連続で減少し、1~4月までの4カ月間の輸出額も前年同期比1.86%減となった。

品目別にみると、天然ゴム(15.6%減)、コンピュータおよび同部品(14.0%減)、機械および同部品(12.2%減)、電子集積回路(9.2%減)など、タイの主要輸出品が大きく減少した。タイ工業連盟(FTI)は、最新の2019年の輸出成長率の見通しを前年比0.0~1.0%とした上で、タイ産業界は世界的なサプライチェーンに組み込まれているため、米中貿易摩擦によるある程度の打撃は避けられないとの見方を示す。

タイに限らず、世界各国で悪化している国際貿易の現状を考慮すべく、商務省は5月31日に在外の商務参事官を集めた会合を開催する予定。この会合を踏まえ、前年比8%増に設定している輸出成長率目標を下方修正する方向だ。

なお、現時点において、自動車など相対的に良好な産業が、世界的な貿易環境から受けるマイナスの影響を一部相殺しているほか、個人消費や投資といった内需に関する見通しは、プラス成長を維持している。

(ナオルンロート・ジラッパパー)

(タイ)

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