欧州委、欧州研究評議会の次期議長人事を発表

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月15日

欧州委員会は5月14日、EU先端研究開発助成などを担う欧州研究評議会(ERC)の次期議長に、ナノ医療の世界的権威であるマウロ・フェラーリ博士を任命する人事案を発表した。同博士は2020年1月1日付でERC議長に就任する見通しで、任期は4年。

EU先端研究開発助成のかじ取りを担う

欧州委のカルロス・モエダス委員(研究・科学・イノベーション担当)は「ERCは優れた興味深い研究への開発助成で世界的に知られており、フェラーリ博士は多分野にまたがる研究で国際的に著名だ。科学の社会的価値への理解、強いリーダーシップ、卓越したコミュニケーションスキルを持つ同博士は、ERCと欧州の科学技術研究を向上させる上で適任だ」とコメントしている。

EUがERC用に確保する予算枠は、2014~2020年(予算期)の研究開発支援枠組み「ホライズン2020」においては131億ユーロのところ、2018年6月に欧州委が提案した次期予算期(2021~2027年)における後継プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」(予算総額:976億ユーロ)では166億ユーロとなった。予算枠の大幅増という追い風を受けて、ERCで野心的な研究開発プロジェクト展開が計画される中、フェラーリ次期議長に対する欧州委の期待は高まる。同博士はイタリア出身だが、米国のヒューストン・メソジスト研究機構の副理事長を務めるなど、米国での活動歴が長い。EUの研究開発プロジェクトにおいても、EU域外との国際連携が重要となっている。

ERCは2007年の設立以降、約9,000ものプロジェクト案件に対する研究助成を行い、ERCの助成支援を得た11万件を超える研究論文が国際学会誌に発表された。また、ERCの支援成果の中には「ノーベル賞6件」「フィールズ賞(若手数学者に対する顕彰)4件」「ウルフ賞(科学・芸術分野の業績に対する顕彰)5件」の受賞実績も含まれる。なお、現在のERC代表は、幾何学および大域解析学の世界的な権威として知られるジャン=ピエール・ブルギニョン議長(就任:2014年1月)が務めている。

(前田篤穂)

(EU)

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