ユーラシア経済連合(EEU)首脳会議、電力共通市場創設条約など署名

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニア、モルドバ)

欧州ロシアCIS課

2019年05月31日

ユーラシア経済連合(EEU)の最高意思決定機関である最高ユーラシア経済評議会(以下、最高評議会)の会合が5月29日、カザフスタンの首都ヌルスルタン(旧称アスタナ)で開催された。EEU加盟各国首脳に加え、2018年からオブザーバー国となっているモルドバのイーゴリ・ドドン大統領、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領、アルメニア元首相でユーラシア経済委員会(EEC)委員長を務めるチグラン・サルキシャン氏が出席した。

会合では、EEU発足5周年を祝うとともに、これまでの成果を報告。加えて、a.EEU域内での電力共通市場形成に関する国際条約の締結、b.EEU関税域内に輸入される製品の追跡メカニズムに関する協定、c.EEU加盟国と中国との国境を通過する製品・輸送機器の情報交換に関する協定にそれぞれ署名したほか、d.域外パートナー国との自由貿易協定(FTA)締結交渉、e.加盟国の2019~2020年のマクロ経済政策のガイドライン、f.EEU下部機関として「工業政策評議会」の創設、g.2019年におけるデジタル化の推進、h.事業活動分野の規制に関するモニタリング、i.2018年の越境市場での競争状況と競争法違反を防ぐ措置、などについて議論を行った。

a.は電力共通市場の原則、運営ルール、権限機関、参加者などを規定するもの。電力共通市場の創設により電力価格が透明化され、加盟国企業がEEU域内のどこからでも安価な電力を購入できるようなる。さらに、電力融通によるEEUのエネルギー安全保障強化にも貢献するとしている。b.については、加盟国間での商品移動に伴う徴税逃れの監視に向け、各国情報システムに基づく製品追跡情報の収集メカニズムの立ち上げを目指すもの。対象となる具体的な製品リストは別途規定される。d.では、2016年10月に発効したベトナムとのFTAについて、2018年にEEU加盟国がベトナムへ行った輸出額は前年比20%増の27億ドル、ベトナムからの輸入額は40億ドル(前年比10%増)に上ったと報告。セルビアとのFTA交渉は実質的に完了し、現在、EEU加盟国の国内手続きに移行。さらに、中国との貿易経済協力協定、イランとの時限的FTAの締結については、関連手続きがほぼ完了しているとした。

そのほか、ナザルバエフ前大統領によるユーラシア統合アイデアの立案や、EEU創設・発展への貢献をたたえ、同氏に「最高ユーラシア経済評議会名誉議長」の称号を授与。同氏にはEEU総会への参加や意見発表、EEUの機能や発展に向けた提案を行う権利が付与される。

前日の5月28日に開催されたEEC評議会会合では、特定製品の関税分類と関税率の変更(注)、技術規則「個人防護機器の安全性」の修正、18歳以上の個人による個人目的でのアルコール・たばこ製品のEEU域外への輸出制限緩和などに関する決定が採択された。

(注)ロシアのWTO加盟協定に基づくもの。9月1日に輸送機器・飛行機器111品目、2020年1月1日に豚肉など24品目の関税率が引き下げられる。

(齋藤寛)

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニア、モルドバ)

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