瀋陽市、革新的な政策で在宅養老サービス整備に注力

(中国)

大連発

2019年05月21日

ジェトロは5月9日、瀋陽市民政局、商務局との共催で、「日中(瀋陽市)高齢者産業交流会」を開催した。日系企業6社が参加し、瀋陽市や各区民政局と交流した。ジェトロは日中高齢者産業交流会を2013年から中国の主要都市で開催しているが、企業と政府との交流を狙いとした開催は今回が初めてだった。

瀋陽市は社区(注)や在宅における養老サービスの整備を進めており、デイサービス、ショートステイ、ロングステイ、訪問サービスなどを総合的に行う施設「区域性在宅養老サービスセンター」(以下、「センター」)を、2019年と2020年にそれぞれ100軒ずつ整備する計画だ。

民間企業の参入を積極的に呼び掛けており、政府は無料で建物を提供し、建設・運営資金の補助などの支援を行う構えだ。とりわけ日本式介護サービスに対する評価は高く、日本企業の参入を通じて、同市の介護サービスレベルの向上を目指している。

交流会では、瀋陽市民政局が「センター」の整備計画と優遇策を説明し、各区民政局がそれぞれの管轄地域で政府が無料で提供する建物や各区内の高齢者の状況を紹介した。日系企業各社はプレゼンテーションを行った。

営利企業と非営利企業を同一視した政策

瀋陽市政府は2018年9月、「瀋陽市在宅養老サービス体系建設実施方案(2018~2020年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表し、2018~2020年にかけて「センター」を260軒整備する目標を掲げた。2018年は既に60軒の整備が終了している。

同市は「センター」の運営に参入する企業向けに、幾つかの優遇策を用意している。建設補助金としては、政府が無料で提供した建物を運営する場合は最大60万元(約960万円、1元=約16円)、企業が自ら建物を用意し運営する場合は最大100万元補助する。運営に対する補助金としては、瀋陽市の養老サービス施設等級認定基準の3~5級に認定された施設に、それぞれ年間5万元、9万元、13万元を支給する。

今回の優遇策は、営利企業も非営利企業と同じようにその恩恵を享受できる。中国の大半の都市では、政府が無料で提供する建物を利用、または補助金を受給する事業の場合、非営利企業として参入しなければならない決まりがあり、外資系企業は参入が難しい。交流会に参加した日系企業からは、同市の取り組みは革新的と称賛する声が多く上がった。

瀋陽市民政局の徐陽副局長によると、同市は「瀋陽市在宅養老サービス条例」を制定し、まもなく公表する予定だ。条例は「センター」の運営企業に対し、現在、入居者数に応じて老人ホームに支給している運営補助金などについて、詳細に言及する。

(注)社区とは、地域におけるコミュニティーの単位で、政府の末端組織となる。地域の治安維持やごみ収集、ボランティア活動の募集などのほか、カルチャー講座、家政サービス、養老サービスなどを住民に提供する。

(呉冬梅)

(中国)

ビジネス短信 8eeb2ab82539f770