政府、RCEP交渉に向け産業界と意見交換

(インド)

ニューデリー発

2019年05月13日

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の協定交渉を担当するインド商工省商工業局は4月22日、RCEPにおける「サービス貿易のあり方」に関する産業界との意見交換会をニューデリーで開催した。インド工業連盟(CII)が共催し、産業界から運輸、観光、銀行、コンサルティング、ITなど8業種から約50人の企業関係者が招かれた。この意見交換会は既にコルカタ、ベンガルール、ムンバイでも実施しており、今回で4回目となる。

RCEPの交渉は2019年中の妥結を目指して進められている。インドでは、対中貿易赤字の増加を懸念する声がある一方で、インドが強みとするIT技術者の「人の移動」やサービス分野で良い条件を獲得し、サービス輸出の競争力を高めることへの期待があると言われる。

意見交換会では政府関係者が、2015年ベースでRCEP域内に対するインドのサービス輸出は約379億ドル、このうちIT・情報関連が約146億ドルと最大となっていることから、インドの強みがITサービスにあることをあらためて紹介した。さらに、ヘルスケア分野の輸出が2005年の1,520万ドルから2015年には7,340万ドルに、教育分野は2005年の3,560万ドルから2015年は1億8,580万ドルに急増し、これらのサービス分野でも高い成長が見込まれるとした。また、インドの新たなサービス輸出の仕向け国として中国が有望だとし、中国向けに提供するサービスの多様化や、製造業とサービス業の連携などへの期待も示した。

産業界からは、「ホテル業の海外展開を進めており、観光関連産業に大きな可能性を感じている」「会計士などのプロフェッショナル・サービス分野の交渉状況を注視している」「銀行業などでデータ管理に関する理不尽な規制が導入されないことを望む」「データ分野の重要性に鑑み、議論を尽くしてもらいたい」といったさまざまな意見が出た。政府はこうした産業界の要望を踏まえ、2019年中の妥結をにらみながら、交渉参加国との間でどれだけ有利な交渉を進められるか、そのかじ取りが注目される。

(古屋礼子、小野澤恵一)

(インド)

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