ドイツ産業界、米国の自動車関税措置延期に声明発表

(ドイツ、米国)

ベルリン発

2019年05月24日

米国のトランプ大統領が5月17日、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく自動車・同部品に対する輸入制限的措置の実施を延期したことについて、ドイツの経済・エネルギー省、主要産業団体が声明を発表した。

ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は「米国政府が現時点で、欧州から輸出した自動車に新たな輸入関税を課さないという事実を歓迎する。当面、貿易紛争の新たな拡大が阻止され得ることは、ドイツおよび欧州経済にとって重要なシグナルだ」と述べた一方で、「貿易政策としては、開放市場、公正な競争および自由貿易を維持していくことに変わりはない。米国政府がドイツの自動車輸入を米国の安全保障上の脅威と見なしていることは遺憾だ。WTOのルールに沿わない見解だと思う」と批判した。

ドイツ産業連盟(BDI)は5月17日、「自動車は米国の安全保障を危険にさらさない。われわれは、引き続き米国商務省に対し、自動車および自動車部品の輸入に関する報告書の公表を求める」とツイッター上でコメント。BDIは延期決定前の5月15日に、米国の輸入車への追加関税措置について、「貿易摩擦の加速を回避する最善の方法は、EUと米国の間の自由貿易協定に合意すること」だとする声明を出している。今後の見通しとして、「EUと米国との間で、過去数十年で作り上げたルールに基づく貿易の維持は不可欠であり、企業は貿易と投資などの活動を続けるために、予測可能で安定したビジネス環境を必要としている。そうした環境が確保されれば、ドイツの自動車産業は米国の生産能力を拡大し、米国産業の競争力強化に貢献できる」と発表している。その中で、ドイツの自動車産業による米国市場への貢献などについても、以下のとおり記載している。

表 ドイツの自動車産業の米国市場への貢献と成長

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)マルティン・バンスレーベン最高経営責任者(CEO)も「貿易政策の対立が現在、ドイツ企業の海外ビジネスに大きな不確実性をもたらしている」と指摘し、ドイツの製造業だけでなく、米国の消費者にも打撃を与えているとコメント。自動車の輸入を国家安全保障への脅威と見なし、追加関税措置の導入を正当化することは理解し難いと批判した。

(油井原詩菜子)

(ドイツ、米国)

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