欧州議会選で与党勝利するも、不信任案可決

(オーストリア、EU)

ウィーン発

2019年05月28日

5月26日に行われたオーストリアの欧州議会選挙で、セバスティアン・クルツ首相率いる中道右派の国民党が過去最高の得票率34.6%を獲得し、第2党の中道左派の社会民主党(23.9%)に過去最高の差(10.7ポイント)をつけて、第1党になった。スキャンダルに巻き込まれた極右の自由党は17.2%で、予想されたほど落とさなかったほか、緑の党(14.1%)、リベラルのNeos(8.4%)は前回2014年選挙時の得票をほぼ維持した。この結果、オーストリアから選出される18人の欧州議員は、国民党7人(2人増)、社会民主党5人(増減なし)、自由党3人(1人減)、緑の党2人(1人減)、Neos1人(増減なし)となった。

選挙結果はクルツ首相の今までのパフォーマンスに対する評価を反映したものとの見方が多く、大方の予想以上の支持を得た格好となった。しかし、翌5月27日には、クルツ首相の暫定内閣(2019年5月24日記事参照)に対する社会民主党提出の不信任案が社会民主党、自由党、左派の「ピルツのリスト」の3党の賛成で可決された。社会民主党は不信任の理由として、自由党の連立離脱で国民党の単独政権になった暫定内閣を信頼することができないことを挙げ、自由党も、ヘルベルト・キクル内務相の罷免によって国民党との信頼関係が修復不可能なほど傷づけられたとして賛成した。

内閣不信任案が可決されたのは第2次世界大戦後初めてのことだ。クルツ首相は退任することとなり、ファン・デア・ベレン大統領は憲法が定める手続きに従って、9月に行われるといわれている総選挙までの暫定首相を指名する予定だ。候補としては、元最高裁判所裁判官のゲアハルト・ホルツィンガー氏、元欧州委員・元農林相のフランツ・フィッシュラー氏、前大統領のハインツ・フィッシャー氏などが挙げられている。新暫定内閣の組閣までは現閣僚が職務を続ける。

クルツ首相の在職期間は525日で過去最短となる(前任のケルン首相は580日)。しかし、クルツ首相の支持率は相変わらず高く(5月26日の世論調査によると52%)、秋の総選挙で国民党が第1党になり、クルツ氏が首相として復帰する可能性が高い。ただし、これまでの経緯を踏まえると、どのような連立となるかは未知数で、政治的混迷の最中にある。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア、EU)

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