トランプ大統領、リスト3の対中追加関税率の25%への引き上げを表明

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年05月07日

トランプ大統領は5月5日付のツイッターへの投稿で、米国の1974年通商法301条(以下、301条)に基づく、中国からの輸入に対するリスト3〔対中輸入額2,000億ドル相当の5,745品目(米国関税率表の上位8桁、一部品目は部分的に対象)〕PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の追加関税率を、5月10日に現行の10%から25%に引き上げる考えを表明した(注)。さらに、「追加関税が課されていない3,250億ドル相当の中国からの輸入に対しても、近いうちに25%の関税を課す」とも述べた。「中国との通商協議は継続しているが、進展が遅過ぎる」とし、協議の進展の遅れが今回の関税率引き上げの背景にあることを示した。

通商専門誌「インサイドUSトレード」(5月6日)によれば、ロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表とスティーブ・ムニューシン財務長官は、中国がこれまでの通商協議で合意した内容をほごにする動きがあったことも示唆した。同誌はまた、USTRが追加関税の引き上げを5月10日午前0時1分に予定していること、追加関税が課されていない中国から輸入品「リスト4」の選定プロセスの開始についても、週内に発表予定であることも報道している。なお、ライトハイザー代表はこれまで、リスト3の関税率引き上げを行った場合は、品目別適用除外制度を設置する考えを示している(2019年1月18日記事参照)。

リスト3の追加関税率の引き上げは、これまでに2回延期されていた。直近では、中国政府との協議において、知的財産権保護、技術移転、農業、サービス、外国為替などの構造的な問題について、重要な進展がみられたことを理由に、USTRは「次の通知」があるまで引き上げを延期すると3月5日に明らかにしていた(2019年3月6日記事参照)。

米中は、合意に向けた閣僚級の通商協議を重ねており、直近では4月30日~5月1日にライトハイザー代表とムニューシン財務長官が訪中し、中国と協議を行った。5月9日からは劉鶴副首相らがワシントンを訪問し、引き続き協議を行う予定だ。協議の結果次第では、追加関税率の引き上げが見送られる可能性も残されている。

通商交渉が継続する中での突然の追加関税率引き上げの表明に、産業界からは反対の声が上がっている。米国アパレル・履物協会(AAFA)のリック・ヘルフェンバイン最高経営責任者(CEO)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは5月5日、既存の対中輸入関税率の引き上げおよび新たな追加関税措置は「米国の家庭、労働者、企業、経済を傷つけるだけだ」と発信し、追加関税率の引き上げに強い反対の姿勢を示した。全米小売業協会(NRF)のシニアバイスプレジデント(政府関係)、デビッド・フレンチ氏外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは「通知から実施まで1週間にも満たない突然の関税率引き上げは、米国企業、特に小規模事業者に深刻な混乱をもたらす」との懸念を示し、トランプ政権が追加関税を脅しとして用い続ければ「米国の消費者は物価の上昇に直面し、米国の雇用も失われるだろう」と警鐘を鳴らした。

(注)301条に基づく中国からの輸入に対するリスト3の主な対象品目については2018年9月20日記事参照

(須貝智也)

(米国、中国)

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