政府が核合意(JCPOA)の一部停止を発表

(イラン)

テヘラン発

2019年05月13日

イランのローハニ大統領は5月8日、2015年7月に最終合意したイランの核開発に関する「共同包括行動計画(JCPOA)」の履行を一部停止すると発表した。米国が2018年5月8日にJCPOAを一方的に離脱してからちょうど1年が経過したタイミングでの対抗措置とみられる。

発表によると、JCPOA関係国に対して60日という期限を設けた上で、米国制裁の影響を受けている原油取引や金融決済が保証されない場合、ウラン濃縮や重水貯蔵に関する制限を順守しないと警告。ただし、現時点でJCPOAからの離脱はないとしている。

米国は2018年8月と11月に対イラン制裁を段階的に再開し、5月2日にはイラン産原油禁輸の適用除外措置を打ち切った。さらに、今回のイラン政府の発表を受けて、トランプ米大統領は5月9日、新たな大統領令に署名し、鉄鋼、アルミニウム、銅の取引に関する制裁を科すなど、イランに対する圧力を強めている。

国内は平静もインフレが生活を圧迫

こうした一連の動きを受けて、イランでは官製デモも一部実施されたが、基本的には国内は平常どおりで、特に大きな混乱はなかった。政治的パフォーマンスと割り切っている向きもある。

他方で、米国による対イラン制裁の影響により、イラン国内の経済情勢が徐々に厳しい状況となりつつあるのは否めない。2018年度の貿易額(2019年5月10日記事参照)や自動車生産台数など(2019年5月10日記事参照)はいずれも前年度を下回っている。また、イラン統計センターが発表した最新の統計によると、2019年4月度(3月21日~4月20日)の消費者物価指数(CPI)は前年同月比51.4%増と大きく増大しており、国民生活を圧迫している。

(中村志信)

(イラン)

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