タクシーライセンス持たない運転手の取り締まり強化、Uberなどの価格が高騰

(ルーマニア)

ブカレスト発

2019年05月27日

ルーマニアで5月16日、タクシーとカーレンタルサービスの活動を規定する法律38/2003号を改正する緊急政令21/2019号が発効した。これにより、タクシーライセンスを持たず乗客輸送サービスを提供する運転手を即時に取り締まることが可能となった。初回の取り締まりの場合でも、最大で5,000レイ(約13万円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約26円)の罰金が科される可能性がある。これまでの法律では、同様の運転を繰り返して行う運転手に罰金を科すと定めていたため、実質的には警官はその場で警告するにとどまっていた。

これに伴い、近年利用者が拡大するウーバー(Uber)やボルト〔Bolt、旧タクシファイ(Taxify)〕などのライドシェアサービスとその利用者が大きな影響を受ける。具体的には、稼働ドライバーの減少によって価格が大幅に高騰したり、配車の待ち時間が長くなったりする可能性が高まる。

ルーマニアではこれまで、正規のライセンスを持ったタクシー運転手がライドシェアの禁止を求めたデモを度々行ってきた。今回の緊急政令の発動は、抗議の声が一部反映された結果と言える。

ダニエル・スチェ副首相は、緊急政令はライドシェアを禁止するものではなく、タクシーライセンスを持たずに乗客輸送サービスを提供する違法運転を即時取り締まるためのものだとしている。その上で現在、関係省庁やライドシェア大手の代表とも協議を行い、ライドシェアの活動を規定する新たな法案の準備を進めていると説明した。なお、政府は当初、緊急政令の発効前にライドシェアに関する新たな法案を可決する予定としていたが、新法案の準備は遅れている。

会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、都市モビリティープラットフォームの国内市場は約16億レイと推定される。うち、ライドシェアの市場規模は約8億8,000万レイで、民間の交通市場の21%を占める。ウーバーなどによると、ルーマニアにおけるライドシェアアプリの利用者は200万人以上とされる。

日本人の在住者からは、「ライドシェアアプリは、目的地も指定できて事前に金額の概算が分かり、便利で安心なので、よく利用していた。タクシー運転手によるぼったくりや質の低いサービス事例をよく聞くため、タクシーの利用には不安がある」といった声も聞かれた。

タクシーのサービス向上への十分な対策がなされていない状況で、ライドシェアだけに厳格な規制を設けるのは、政府によるタクシー業界団体への迎合とも言える。オンラインのライドシェアサービス普及による利用者利益の拡大や、デジタルエコノミーの発展を妨げない法案の作成が早急に望まれる。

(山本千菜美)

(ルーマニア)

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