FCA、オンタリオ州で約1,500人の人員削減計画を発表

(カナダ)

トロント発

2019年04月05日

フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)は3月28日、カナダ・オンタリオ州ウィンザーの組立工場で、2019年9月30日からの約1,500人の人員削減計画を明らかにした。同工場では、クライスラー「パシフィカ」およびダッジ「グランドキャラバン」を生産しているが、世界的な需要の変化に対応するため、生産体制を現在の3シフト制から、9月末に2シフトに減らす(「カナディアン・プレス」3月29日)。

連邦政府は支援策表明、オンタリオ州政府は前州政府政権を批判

FCAの発表を受けて、連邦政府は雇用確保に向けた支援を表明した。連邦政府のナブディープ・ベインズ・イノベーション・科学・経済開発相は、ニュースにはとても失望したものの、本件で影響を受ける従業員の雇用を守るため最善を尽くす、とコメントし(連邦政府発表3月28日付)、翌29日には、FCAカナダのレイド・ビッグランド会長との対談を前に、減産が予定されているクライスラー「パシフィカ」のハイブリッド車について、補助対象外だったゼロ・エミッション車購入時の補助金5,000カナダ・ドル(約42万円、Cドル、1Cドル=約84円)の対象車種とすることを明らかにした(「ウィンザースター」紙3月29日)。連邦政府が3月19日に発表した2019年度(2019年4月~2020年3月)予算案では、ゼロ・エミッション車購入時の補助の対象車種の価格上限は4万5,000Cドル未満に設定され、価格が5万1,000Cドル以上のクライスラー「パシフィカ」のハイブリッド車は補助対象外となっていた。さらに、ベインズ・イノベーション・科学・経済開発相は「ダグ・フォード州首相率いるオンタリオ州政府が(ゼロ・エミッション車に対する)州の補助金プログラムを廃止して以降、ハイブリッド車の売り上げは急減している。プログラム廃止以降、誰もクライスラー・パシフィカを買わなくなったといっても過言ではない。連邦政府は補助金を提供して支援を図る」と述べた。

一方、ダグ・フォード・オンタリオ州首相は「フィアットクライスラーへのメッセージとして「前州政府政権が15年にわたって敷いてきたアンチビジネスの政策に基づいて、今回の決定をしないでほしい。当政権は減税、電気コストの低減や各種の規制を撤廃してきた。自動車メーカーがオンタリオ州に投資を行うのに今ほど絶好の機会はない」との声明を発表している(オンタリオ州政府プレスリリース3月28日付)。また、翌29日、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・カナダのケンブリッジ工場での「RAV4」生産ラインの完成式に参加した同州首相は、FCAやFCAのサプライチェーンに依存する従業員、家族と問題を共有し、解決に全力を挙げる、とも述べた。こうした各政府の対応に対し、当地自動車コンサルタントのデニス・デロジエ氏は「今回の件は、当該工場、クライスラー、車種そのもの、労働組合とも何の関係もなく、純粋にアダム・スミス(の経済論)に基づくものだ。商品を買ってもらえなければ、コスト削減を検討するしかない」とコメントしている(「カナディアン・プレス」3月29日)。

(飯田洋子)

(カナダ)

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