2019年の成長率予測を大きく下方修正

(ドイツ)

ベルリン発

2019年04月11日

ドイツの主要経済研究所(注)は4月4日に発表した春季合同経済予測で、2019年と2020年の実質GDP成長率をそれぞれ、0.8%、1.8%と予測した(表参照)。2018年10月の前回予測(2018年10月5日記事参照)に比べ、2019年の成長率を1.1ポイント下方修正した。

表 主要経済研究所の春季合同経済予測

主要経済研究所は、ドイツ経済が2018年半ば以降、明らかに減速傾向にあり、国外、国内双方にその要因がある、としている。米中貿易摩擦、英国のEU離脱(ブレグジット)などによる世界経済の先行き不安は輸出に影響し、国内では自動車分野の不調、ライン河の水位低下による物流の障害、供給面での障害や熟練労働者の不足による生産への制約などが減速の要因となった。2018年秋時点の予測では、国内生産への障害や世界経済の冷え込みを過小評価していたとし、2019年の実質GDP成長率を大きく下方修正した。

ただ、主要経済研究所では、政治的リスクが高まらなければ、2四半期以上にわたってマイナス成長が続く景気後退に陥るリスクは少ないと見込んでいる。2019年中に国内生産の制約要因がある程度解消する見込みもあることなどにより、2020年のGDP成長率は前回予測と同じ1.8%を予測している。

失業率は2018年に5.2%と、ドイツ統一以来の最低値を記録し、2019年に4.8%、2020年には4.6%と低下する傾向で、労働力不足が続く。

消費者物価(CPI)上昇率は、2018年の1.8%の後、2019年は1.5%、2020年は1.8%と2020年まで1%台に収まる。財政収支は2019年にGDP比1.2%の418億ユーロの黒字、2020年はGDP比1.0%の356億ユーロの黒字となる見込み。

主要経済研究所は今後のリスク要因として、米国の通商政策に起因する貿易紛争、英国のブレグジット、中国経済の先行きの不透明さを挙げた。今回の予測では、英国がEUから合意なく離脱すること(ノー・ディール)は想定しておらず、ノー・ディールの場合には2019年、2020年の成長率は今回の予測値を明らかに下回るであろうとしている。

(注)主要経済研究所とは、ifo経済研究所、ドイツ経済研究所(DIW)、ハレ経済研究所(IWH)、キール世界経済研究所(IfW)、RWIエッセン。

(油井原詩菜子)

(ドイツ)

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