シカゴで5G開始から2週間、課題あるも急拡大に期待

(米国)

シカゴ発

2019年04月18日

米国の携帯通信事業者ベライゾンは4月3日に第5世代移動体通信技術(5G)の通信サービスを開始し、ダウンロードスピードは762Mbps(注1)に上ると発表した。韓国との競争の中で急いで開始されたサービスは、まだ実運用上の課題も見られるものの、今後、通信環境の激変によるインダストリー・ディスラプション(破壊的イノベーション、注2)が期待される。

ベライゾンの5Gサービスは現在、イリノイ州シカゴとミネソタ州ミネアポリス一部地域のみで利用可能だ。既にツイッター上では、400~600Mbpsで通信できたという投稿が写真付きで数多くなされている。同社は年内に30都市で5Gサービスを始める予定だ。自動車や家電だけでなく、交通機関や工場など全てがワイヤレスでつながり、スマートシティー化が進むことが期待される。

実は、米国の別の通信事業者であるAT&Tも、2018年12月に19都市で5Gサービスを開始したとしているが、そのサービスを利用できる携帯・通信端末が市販されていない。実際に利用できる回線としては初のベライゾンのサービス展開だが、韓国と世界初の5G展開を競って開始されたため課題も見られる。現在、米国で5Gが利用できるのは、モトローラ製の最新スマホ Moto Z3(480ドル)だけだが、これに追加の5Gモデム(350ドル)を取り付け、さらに通信プランに月額10ドルを支払わなければならないのだ。しかも、このような端末を用意しても、5Gサービスを利用するのは容易ではない。The VergeやCNETといったメディアが伝えるところによると、サービスが提供されているはずのシカゴ美術館やシカゴシアター、ミレニアムパークのいずれでも、5Gのシグナルを見つけることはできなかったという。また、業界誌PCマガジンによると、291カ所でテストしたところ、5Gの電波をつかめたのは64カ所だった。ベライゾンのネットワークエンジニアリング担当副社長のマイクハーベルマン氏は「現在のところ、通信範囲は非常に限定されている」と認めたが、「通信基地の増設により、数カ月以内には劇的に良くなるだろう」と述べている。

5Gサービスは開始した直後で基地局も利用できる端末も少なく、まだ公開実験といった段階だ。しかし、小さく始めて失敗を繰り返し、大きく成長させるというリーンスタートアップの考え方が盛んな米国では、2時間の映画を約3秒でダウンロードできる5Gサービスは、今後数カ月で確実に広まるとみられる。

(注1)Mbpsは、1秒間に送受信可能なデータの量を表す単位。数値が大きいほど、通信速度が速い。

(注2)既存事業の秩序を破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーション。

(河内章)

(米国)

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