ウラジオストクの「ハイアット」物件、ようやく売却へ
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2019年04月22日
ロシア・オークション・ハウスは4月15日、ウラジオストク中心部に所在する2つの未完工物件の売却のオークションを実施し、購入者は公開型株式会社パルク-オテリ「ブルドゥグス」に決定したと発表した。
未完工の2物件はいずれも沿海地方政府の所有で、2012年のウラジオストクでのAPEC首脳会議に向けて建設され、国際ホテルチェーン・ハイアットブランドの5つ星ホテル「ハイアット・ゾロトイ・ログ(金角湾)」と「ハイアット・ウラジオストク・ブルヌィ」が入居する予定だった。しかし、技術書類の作成ミスなどもあり、APECまでに建設が間に合わず、2014年には工事が凍結されそのまま放置。その後、物件を売却するか、公費を投入して工事を継続するかどうかの方針をめぐって混乱が発生するなど、物件の扱いは長い間、沿海地方行政の頭痛の種となっていた。
売却の試みは過去4回あったが、いずれも不調に終わった。今回はパルク-オテリ「ブルドゥグス」のほか、中国系企業も参加意思を表明していたが、参加に必要な手付金が支払われず、最終的に同社のみの参加となった(注)。同社は東シベリアのイルクーツク州に登記され、ロシアの大富豪・企業家であるオレグ・デリパスカ氏率いる「En+グループ」が子会社・孫会社を経由して所有している。
オークション主催者によると、最終的な売却価格は合計で37億ルーブル(約64億7,500万円、1ルーブル=約1.75円)。「ハイアット・ウラジオストク・ブルヌィ」(14階建て、ホテル面積3万6,400平方メートル、スパ施設1万200平方メートル、完工率79%・52%、敷地面積3万1,200平方メートル)が21億ルーブル、「ハイアット・ゾロトイ・ログ」(建物面積6,100平方メートル、完工率60%、敷地面積1.5ヘクタール)が16億ルーブルとなった。一方、沿海地方政府関係者によると、両建物の建設費用は183億ルーブルと試算され、1月22日開催の前回オークションでも、最低入札価格は105億ルーブルに設定されていた。そのため、今回の売却価格との差(68億ルーブル)が大きい点もメディアに注目されている(ポータルサイト「プリマメディア」4月15日)。
「ハイアット・ウラジオストク・ブルヌィ」(ナベレジナヤ通り13、ジェトロ撮影)
「ハイアット・ゾロトイ・ログ」(コラベリナヤ・ナベレジナヤ通り10、ジェトロ撮影)
ロシア・オークション・ハウスのアンドレイ・ステパネンコ社長は「歴史的な出来事と言える。ホテルの売却はロシア極東地域で最も待ち焦がれた取引の1つ。投資家が施設を最大限活用し、ゲストをウラジオストクにひきつけ、極東のビジネス環境と観光産業を発展させると確信している」とコメントを発表している。
(注)オークションに1社のみ応札しなかった場合は、オークション自体は成立しなかったとみなされるが、30営業日以内に最低価格で売買契約を締結することができるとされている。
(高橋淳)
(ロシア)
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