国民統計局、ビッグデータ解析により経済活動指標を早期算出

(英国)

ロンドン発

2019年04月23日

英国国民統計局(ONS)は4月15日、ビッグデータを活用して解析した第1四半期(1~3月)の経済活動指標を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の指標は公式なものではなく、今後のさらなるビッグデータ活用の開発のためのフィードバックを募るために公表したもの。従来のGDPなどの経済指標よりも約1カ月早く新しい経済活動指標を公表できるという。

2016年の英国経済統計レビューが統計公表までに要する時間の長さについて指摘しており、早期公表に向け、ONS内の「データ科学キャンパス」が今回のプロジェクトに取り組んでいるもの。解析では、付加価値税(VAT)申告額、自動船舶識別装置による貨物船の入出港、センサーを用いたイングランド内の貨物車の交通状況のビッグデータを用いて景気動向指数を導く。

第1四半期のVAT申告額は、2018年第4四半期(10~12月)および2008~2018年の平均と比べてわずかに低かった。これは、売上高の増加報告をしている企業よりも減少報告をしている企業が多かったことを意味する。3月のVAT申告社数は、2008年から2018年の平均よりも低く、1月および2月の増加傾向から一転した。他方、1月から2月にかけての大型車の平均交通量はおおむね安定しているとした。

データ科学キャンパスのルイーザ・ノラン博士は、今回の公表内容はONSの公式な統計ではなく、手法を開発中であるため、完全なものではないとしている。また、GDPなどの予測をするものではなく、公式の経済統計を補完し、金融政策担当者やアナリストが経済状況を解釈する際の参考となる経済の動きを示すものと位置付けている。今後は、交通状況や港湾のデータから物品がどのように移動しているかという指標や、VATデータを解析し粗付加価値(GVA)を算出して、経済構造をより高精度に反映した指標の公表などを目指す。

(鵜澤聡)

(英国)

ビジネス短信 266b364790490820