5G運用に向けモスクワ市街地での試験実施へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年04月18日

国家無線周波数委員会(GKRCH、注)は4月15日に開催された定例会合で、モスクワ市内での第5世代移動通信システム(5G)の試験開始を承認した。対象となる試験区域は、市内中心部の赤の広場に隣接するザリャディエ公園、全ロシア博覧センター(VDNH)、モスクワ大学のある雀が丘、メインストリートの1つであるトベルスカヤ通り、郊外にあるスコルコボイノベーションセンターの5カ所。10月までに開始される。

デジタル発展・通信・マスコミ省のオレグ・イワノフ次官は「現在、試験実施に向け通信事業者への選択肢を検討しているところ」と述べ、各通信事業者にそれぞれの区域を割り当てるか、全ての通信事業者が全試験区域に参加できるかたちにするかを審議しているという。試験は27.1~27.5ギガヘルツ(GHz)および4.8~4.9GHz周波数帯において実施される。

「コメルサント」紙(4月1日)によると、2018年にスコルコボイノベーションセンター、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、タタルスタン共和国カザン郊外のイノポリスで5G試験が実施されていたが(2018年5月28日記事参照)、実際の都市条件下での関連機器の作動を含めた確認には試験区域の拡大が必要とされており、民間大手通信事業者メガフォンは2018年に19の主要都市で5G試験の可能性を調査し、モスクワが最も望ましいと提案していた。

他方、ロステレコムとメガフォンに上記の試験用に割り当てられていた5G周波数帯(24.25~29.5GHzおよび3.4~3.5GHz)の利用延長は許可されなかった。不許可の理由は、同周波数帯を国防省の衛星システムなども利用しており、3.4~3.8GHz周波数帯の機器が干渉を受ける恐れがあるとする国防省などからの意見を勘案したもの。今回の会合では、ロステレコムのミハイル・オセエフスキー社長は「本試験には(今後、5Gを活用したコンテンツなどの)市場を形成する中小企業が関心を示している。3.4~3.8GHz周波数帯の利用ができないことは、政府が掲げるデジタル経済政策の妨げとなる」とし、同周波数帯の利用延長について申し入れを行った。

この問題は、国防省の衛星システムが利用している周波数帯を他の周波数帯に移して交換することで解決可能とされており、それに向けた決定文書をGKRCHは準備している。他方、他の周波数帯への移行に伴って、100億~160億ルーブル(約170億~272億円、1ルーブル=約1.7円)の費用の発生が見込まれている(「コメルサント」紙4月1日)。

写真 5G試験実施が予定されているモスクワ中心部のザリャディエ公園(ジェトロ撮影)

5G試験実施が予定されているモスクワ中心部のザリャディエ公園(ジェトロ撮影)

(注)周波数領域の規制および周波数割当・利用に関する国家政策決定を担う、デジタル発展・通信・マスコミ省が管轄する省庁間調整機関。同省のほか、経済発展省、連邦反独占局、天然資源・環境省のほか、国防省、内務省、連邦警備局、連邦保安局、対外情報局などの治安機関も参加している。

(齋藤寛)

(ロシア)

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