政府がEV普及へ前向き姿勢に、ダッカでセミナー開催

(バングラデシュ)

ダッカ発

2019年03月28日

ジェトロは3月13日、バングラデシュ地場の商工会議所傘下の調査機関ビルド(注)および日本の電気自動車製造会社テラモーターズとともに、「バングラデシュの電気自動車(EV)政策および展望」に関するセミナーをダッカで開催した。バングラデシュ政府はこれまでEVの普及に慎重な姿勢を崩していなかったが、セミナーに主賓として参加したティプ・ムシ商務相は「大気汚染、温室効果ガスなどの環境問題を考慮する上で、EV関連の政策は重要だ」と述べ、EV普及に対して政府として前向きに取り組む姿勢をアピールした。

バングラデシュ国内で最も普及しているEVが、電動三輪(BRTW)だ。その数は約100万台に上るが、市民の中には「貴重な電力を奪う」「搭載する鉛電池が環境を破壊する」「加速不良が原因で交通渋滞を引き起こす」といった理由から、BRTWの普及に反対する意見を持つ人々も一定数いる。こうした意見を踏まえ、政府もこれまではメーカーやその使用者に対して必ずしも協力的ではなく、BRTWの車両登録制度など政府主導の取り組みの実現は難しかった。しかし、特に農村部のモビリティーはBRTWに支えられるところが大きく、政府が推進する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development GOALs)の中の目標11「住み続けられるまちづくりを」において、誰もがアクセスできる安価で質の高いモビリティーの確保は必須とされていることも事実で、政府は2018年にはBRTWを含むEV関連法案をドラフト(草案化)するなど、ようやく重い腰を上げた。

政府要人を含む多数の関係者が出席

こうした背景の下で行われた本セミナーでは、ジェトロが調査委託したビルドの担当者とテラモーターズの上田晃裕アジアEVビジネス代表が登壇し、他国とのEV政策に関する比較やバングラデシュにおけるBRTWの重要性と問題点を整理した。問題点への対処方法として、電力については夜間電力の活用、環境問題についてはバッテリーの登録制度、加速不良についてはEVの高速道路への乗り入れ禁止などを提案した。

セミナーには、主賓のティプ商務相に加え、スペシャルゲストとしてアブドゥル・カラム・アザド首相府筆頭調整官と泉裕泰駐バングラデシュ日本大使、オサマ・タスィール・ダッカ商工会議所会頭が参加した。アザド筆頭調整官は「バングラデシュ国内の発電量は大幅に増え、EVへの電力供給を批判する必要はなくなった」と発言し、一部の市民の中にある懸念を払拭(ふっしょく)した。会場には政府関係者を中心に181人が集まり、女性ドライバーの奨励に関する提案などについて、質疑応答も非常に活発に行われた。

バングラデシュにおいて、EVの普及を促進する具体的な政策が策定されれば、テラモーターズを筆頭に、EVメーカーのさらなる投資につながることが期待される。ジェトロは日バ官民経済対話などで、EV政策について引き続きフォローしていく予定だ。

写真 セミナーで並んだ登壇者ら(右からビルドのイブラヒム会長、ジェトロ・ダッカ事務所の新居大介所長、ティプ商務相、泉駐バングラデシュ大使、ダッカ商工会議所のオサマ会頭)(ジェトロ撮影)

セミナーで並んだ登壇者ら(右からビルドのイブラヒム会長、ジェトロ・ダッカ事務所の新居大介所長、ティプ商務相、泉駐バングラデシュ大使、ダッカ商工会議所のオサマ会頭)(ジェトロ撮影)

写真 熱心に聴講する参加者(ジェトロ撮影)

熱心に聴講する参加者(ジェトロ撮影)

(注)ダッカ商工会議所、メトロポリタン商工会議所、バングラデシュ中小企業基金の下部組織。政策とビジネスに関わる調査を主に行っている。

(古賀大幹)

(バングラデシュ)

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