ジェトロ、超高強度レーザー研究所の入札説明会を開催

(ルーマニア)

ブカレスト発

2019年03月29日

ジェトロは3月6日と8日、東京と大阪で、「ルーマニア経済セミナーおよびELI-NPガンマ線発生装置の入札説明会」を開催した。ELI-NP(イーライ・エヌピー:ルーマニア・ブカレスト郊外にEU基金3,500万ユーロを投じて建設中の超高強度レーザー科学研究所)、大阪大学レーザー科学研究所との共催で、光学機器や加速器関連企業など18社25人が参加した。

写真 ジェトロ(東京)での説明会(ジェトロ撮影)

ジェトロ(東京)での説明会(ジェトロ撮影)

ELI-NPの設備は大きく2つに分かれる。1つはフランス大手重機タレスが既に受注・完成させた「超高強度レーザー発光装置」、もう1つが今回の入札対象の「ガンマ線発生装置」だ。どちらか一方を持つ研究所は他国にもあるが、両装置が同じ建物内にあるところはない。ELI-NPの田中和夫研究所長(元大阪大学教授)は「近い将来、超高強度レーザー光とガンマ線を正面衝突させることで、数多くの興味深い現象を観測できる。先進医療をはじめとした産業界への応用はもちろん、元素の起源を探ることも可能になる。ELI-NPではノーベル賞級の研究成果を出すことができるだろう」と期待を膨らませる。

ELI-NPによる「ガンマ線発生装置」の入札公示が間近なことを受け、ジェトロ・ブカレスト事務所の水野桂輔所長は、日系企業の参入を促すため、ルーマニア経済の最新情報と公共調達制度の概要を説明した。入札書類はルーマニア語で提出する必要があるため、応札者は実務上、現地パートナーを見つけることが不可欠、また、入札のやり取りは全てプラットフォーム「SICAP」上で行われるが、その利用拡張電子署名の取得や企業情報の登録など意外と手間がかかる。

ELI-NPの田中研究所長とカリン・ウル技術所長は、入札のポイントとして、「ELI-NPは2014~2020年分としてルーマニアに配分されたEU基金を使用しており、2022年までに全工事を完了させる必要がある。期限が迫っているため、可能性のありそうな複数の候補者をあらかじめ選定し、競争にかける「競争的交渉手続き」を採用する。応札者に求められる最重要ポイントは性能保証、つまり機材を納品して終わりではなく、その装置が正常に作動するように組み上げることだ。高度で複合的な技術が要求されるため、コンソーシアム(事業共同体)を優先的に選定したい」と説明した。

今後のスケジュールは、5月末までに落札者と契約を完了し、11月末までに技術要件を明確にするところまでが第1段階、2021~2022年の第2段階で装置が搬入・設置される見込みだ。入札説明会は米国などでも行われる予定で、日本企業が落札できるかが注目される。

(水野桂輔)

(ルーマニア)

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