オーストラリア政府、中国での石炭輸入制限報道に静観の構え

(オーストラリア)

シドニー発

2019年03月11日

オーストラリア産石炭の中国への輸出に当たって、中国の複数の港で通関が遅延しているとの情報について、国営放送ABCニュースは2月22日、サイモン・バーミンガム貿易・観光・投資相が「石炭輸出に関し、中国側で輸入を制限しているという明示的な情報はない」「今回の遅延は豪州産石炭に限ったことでなく、中国側の通関処理の遅延が原因だ」と発言したことを報じた。

モリソン首相も本件に関し、「両国の政治関係の悪化を示唆するものでない。中国の港で輸入手続きが遅延することは珍しくない」とコメントしている。

今回の通関手続きの遅延に関して、一部のアナリストは、オーストラリアが中国企業の5Gネットワークへの参入を禁止したことに関連付けている。これに対して、オーストラリア鉱業評議会は「中国との貿易関係においては冷静な対応が必要。中国とは長期にわたる歴史的な関係があり、不確実な事象に遭遇することはよくある。慎重に解釈すべきだ」と、主要紙「オーストラリアン」(2月25日)に声明を発表している。同評議会は「中国は重要な市場だが、石炭生産が世界1位の中国国内の需給バランスにより、影響を受ける可能性はある」とし、5G問題との関連性に触れなかった。

一方、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)のフィリップ・ロウ総裁は「通関手続きの遅延が続けば、他の市場への輸出を模索する可能性がある」と、懸念を示している。

(小柳智美)

(オーストラリア)

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