欧州産業界、短期のブレグジット延期に期待

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年03月22日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は3月20日、翌日からのEU首脳会議に向けて、英国の合意なき離脱(ノー・ディール)を避け、秩序ある離脱を実現するための現実的な方策として、短期の離脱延期を支持する認識を明らかにした。

不透明感拡大を伴う離脱延期の長期化は不支持

ビジネスヨーロッパは「移行期間を含む離脱協定(の妥結)が(英国の)円滑な離脱のために残された唯一の選択肢」と指摘したが、離脱予定日が翌週に迫る中、双方での離脱協定の承認手続きなど残っている課題も考慮して、「離脱延期を明確に支持する」との認識を表明した。ただ、その期間については、特に中小企業のビジネス環境の不透明感を長期化することなく、英国の秩序ある離脱に向けた道筋を定め、EU・英国の将来関係へのスムーズな移行を実現するために最小限なものにとどめるべきと指摘。

EUでは、欧州議会選挙を5月23~26日に控えており、その時点で既に英国が離脱している前提で議席の再配分などの調整がなされており、離脱延期にはこうした動きへの配慮も必要となる(2018年5月28日記事参照)。ビジネスヨーロッパは離脱延期が欧州機関の機能を脅かすものであってはならないとも指摘、英国政府に事態を打開し得る現実的な対応を迫った。

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体であるCOPA-COGECAでも3月20日、食品流通事業者系の欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とフード・ドリンク・ヨーロッパがノー・ディール回避を訴える声明を発表した。欧州を代表する農水産・食品関連3団体によると、同産業のサプライチェーンはEU・英国をまたいだ複雑なもので、統合されたジャスト・イン・タイムの流通に支えられている上、鮮度が問われる商品特性もあることから、ノー・ディールの場合、深刻な影響を受けるという。このため、同3団体も、離脱延期を支持しているが、それは英国の秩序ある離脱に貢献する場合に限られるとしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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