プラユット首相、国際競争力強化と国内格差是正の両立を目指す

(タイ)

企画部海外地域戦略班

2019年03月05日

プラユット首相は、3月4日に開催されたタイ投資委員会(BOI)主催の大規模シンポジウム「タイランド・インベストメントイヤーの今」(注)で、約2,000人の参加者を前に、国際競争力強化のため、デジタル経済の推進や周辺国との連結性強化に主眼を置いた経済改革に取り組むことを約束した。

同首相は、これらの政策を進める重要なコンセプトとして、(1)現政権の4~5年間の取り組みを継続し、付加価値を高めること、(2)現状のインフラ基盤や物流網の一層の改善に取り組むこと、(3)官民連携により、未来へ向けた新たな価値を創出すること、を挙げた。

特にインフラの側面では、タイと周辺の国とのシームレスな連結性が重要だとして、タイとそれぞれの国の2国間関係ではなく、メコン地域全体での連結性を同時並行的に高める政策を推進する。新たな価値の創造という観点では、スタートアップ企業の創出と、デジタル経済の進展を見据えた次世代の人材育成に取り組む方針を示した。

また、国の産業高度化に向けたビジョン「タイランド4.0」の実現に向けては、国内の人材育成のみならず、海外の高度人材の誘致や、バイオ技術の高度化、産業ロボットや航空機などの高度産業向け投資の誘致に重点を置く。

プラユット首相がシンポジウムの中で繰り返し強調したのが、国内の格差是正を通じた包括的、持続的な成長の実現だ。そのために、全国の村レベルでの教育の質の向上や、全ての国民のデジタルへのアクセス拡大、農業のイノベーションを通じた生産性向上、中小企業のグローバルバリューチェーン参画支援の強化などの課題に最優先で取り組む。さらに、これらの格差是正に向けた取り組みは中長期的な課題として、「選挙(3月24日の予定)後の次期政権においても必ず継続されるものだ」と強調した。

(注)タイ政府が年1回、国内外のビジネスパーソンを対象に、その年の重要な経済・投資政策の方向性を発表するシンポジウムの位置付け。

(伊藤博敏)

(タイ)

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