追い上げる韓国・中国製品、輸送費と取引条件ネックで日本ブランドの優位揺らぐ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年03月19日

「サニト」はロシア極東のウラジオストクを拠点に、おむつや洗剤などのトイレタリー商品や化粧品を専門に扱う輸入商社だ。小売店として「メグミ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を経営し、モスクワ、サンクトペテルブルクをはじめ、ノボシビルスク、カリーニングラードなどロシア各地に店舗を構える。アレクサンドル・ウシャコフ社長は日本好きが高じて、2003年に日本製品の輸入事業を開始した。しかし、近年は売り上が減少しており、日本製品ではなく韓国や中国製品の取扱量を増やさざるを得ない状況だという。その理由について、2月15日にジェトロが実施したインタビューで、同氏は以下のとおり述べた。

写真 アレクサンドル・ウシャコフ社長、後ろは展開先に印をつけたロシア地図(ジェトロ撮影)

アレクサンドル・ウシャコフ社長、後ろは展開先に印をつけたロシア地図(ジェトロ撮影)

2003年創業当初は、品質の良い化粧品が市場に少なかったため、高価でも高品質な日本製品がよく売れていた。しかし、2014年以降の不景気による生活水準(可処分所得)の低下で、より安価なものへの需要が高まったことに加え、韓国・中国製品の品質向上により、日本製品のポジションが失われつつある。現在、売り上げのうち65%が日本製品だが、2014~2018年の4年間でサニト社の韓国製品の取扱量は3倍になっており、今後さらに韓国・中国製品の割合が伸長する見込みだ。

韓国・中国製品の台頭には、ほかにも理由がある。輸送コストだ。杭州(中国)からウラジオストクまで約8日間、1,000ドルなのに対し、横浜港からプサン(韓国)を経由してウラジオストクに到着するまでは、その約2倍(約2週間、2,000ドル)かかる。また、日本メーカーの多くが代金の100%前払いを求めるのに対し、韓国や中国は15%程度の前払いで済む。日本からの輸送はただでさえコストがかさむうえ、前払いから販売代金の回収まで70日間かかる。こうした資金繰りの難しさが日本製品輸入のハードルとなっている。

写真 ウラジオストク市内の店舗は、噴水通りとも呼ばれ、あか抜けた雰囲気のあるアドミラル・フォキン通りに位置(ジェトロ撮影)

ウラジオストク市内の店舗は、噴水通りとも呼ばれ、あか抜けた雰囲気のあるアドミラル・フォキン通りに位置(ジェトロ撮影)

売り上げ不振の背景として、認証取得の難しさもある。日本の制度では工場単位で認証を取得できるのに対し、ロシアでは製品単位で取得する必要がある。商品のマイナーチェンジでも再度認証を得なければならず、その煩雑さゆえに輸出を断念する日本のメーカーも少なくない。認証取得にかかる費用は、日本のメーカーの場合、自社で半分ずつ持つことが多いが、韓国メーカーは全額負担してくれる。これも日本製の新商品の輸入が難しい理由の1つとなっている。

高品質というだけで日本製品を売るのは難しくなった。ウシャコフ社長は「ロシア市場へ引き続き日本製品を送り出すためには、日本のメーカーの協力が不可欠だ」と述べ、代金の後払いや認証取得の煩雑さへの理解を求めた。加えて、韓国・中国製品に対抗するため、販促活動の重要性も強調している。

(加峯あゆみ)

(ロシア)

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