ベネズエラ国営石油会社への制裁で混乱する米国製油業界

(米国、ベネズエラ)

米州課

2019年02月05日

米財務省が1月28日に発表したベネズエラ国営石油会社(PDVSA)に対する新たな制裁措置(2019年2月5日記事参照)により、米国の製油業界で混乱が広がっている。

米国はベネズエラにとって最大の原油輸出先であり、米国にとっても、ベネズエラはカナダ、サウジアラビアに次ぐ3番目の原油調達先外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。近年減少してきたとはいえ、米国は2018年11月時点で日量56万バレル以上の原油をベネズエラから輸入している。米国内ではシェールオイルの生産が急増しているが、油質的には軽質油のため、米国製油業界では、ディーゼルなどを生産する上で硫黄分のより多い重質油に対して一定の需要がある。ベネズエラ産の重質油を主に輸入しているのは、米国最大の製油企業バレロ・エナジーとシェブロン、PDVSAの米国子会社シトゴ(CITGO)の3社だ。このうち、シトゴ・グループは、ルイジアナ、テキサス、イリノイ各州に製油施設を有し、製油能力は日量で75万バレル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに達している。製油されたガソリンやディーゼルは全米のガソリンスタンドで販売されている。

今回の制裁では、2019年4月までPDVSAとの取引を継続可能とする暫定措置を盛り込んでいるものの、PDVSAは原油代金の前払いを要求しているため、米国の製油企業はPDVSAとの取引を停止しつつある。このため、既に米国企業向けに出荷される原油を積載した石油タンカーの一部はベネズエラ沖に停泊したままとなっている。

さらに、米国内の製油企業は、ベネズエラからカナダなどに重質油の調達先を変更する必要がある。米国内では重質油不足の懸念が高まっており、米国メキシコ湾岸の重質油価格指標であるMARS USは、財務省の発表のあった1月28日の1バレル56.69ドルから、2月5日には59.76ドルに上昇している。

(木村誠)

(米国、ベネズエラ)

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