約10年ぶりに最低賃金引き上げ、市場活性化に期待

(ギリシャ)

ミラノ発

2019年02月22日

ギリシャ政府は1月30日、約10年ぶりに公共部門・民間部門における最低賃金の引き上げを発表した。2月1日から適用が開始された。月額の最低賃金は、586ユーロから650ユーロ(10.9%増、手取り:約546ユーロ)に引き上げられた。2012年2月から導入されていた25歳以下の若年労働者に、通常の最低賃金より12%低い最低賃金を適用する制度は撤廃され、失業、出産、学業などの各種手当は拡充される。

EUは、ギリシャに対する第3次金融支援プログラム完了後に、構造改革の進捗に対する監視を強化している(2018年7月11日記事参照)。今回のギリシャ国内最低賃金引き上げに関しても、EUは詳細説明を要請していた。ギリシャの労働相はこれに応じて、報告書を提出、EU側も慎重な政策実施を要請しつつ、これを認めた。ギリシャ政府は、この最低賃金引き上げにより、主に若年労働者に支払われる給与が国内市場に還元され、国内経済の活性化に貢献し、結果として最低賃金引き上げが税収の増加というかたちで国に還元されると期待する。

3月11日のユーログループ(非公式ユーロ圏財務相会合)では、ギリシャの経済成長や財政状況、また構造改革の進捗状況が評価され、議論されることになっているが、ギリシャ国内紙の多くは、今回の最低賃金引き上げがギリシャ経済の先行きに対して悪影響だと見なされる心配はない、と報じている。

一方、経済団体は最低賃金の引き上げには同調しつつも、中小企業などへの負担増に対して懸念を示し、「経済バランスを図るには、社会保険料や法人税などの税率削減も必要だ」との声明を発表している。

(井上友里、山内正史)

(ギリシャ)

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