カリフォルニア州の新知事、高速鉄道計画を大幅縮小

(米国)

サンフランシスコ発

2019年02月20日

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は2月12日、1月に就任してから初めての施政方針演説を行った。その中で、サクラメント・サンフランシスコ~サンディエゴ間を結ぶ高速鉄道の当初案は、コスト面・建設期間ともに現実的ではないとし、経済活性が必要なマーセッド~ベイカーズフィールド間を結ぶセントラルバレー(注)だけで開通すべきだと述べた。知事は、高速鉄道プロジェクトそのものを撤廃することはないと明言しているが、大都市間(サンフランシスコ~ロサンゼルス)を2時間40分以内で移動できることをうたった当初案からは大幅な規模縮小となる。

カリフォルニア州高速鉄道建設計画が具体化したのは、アーノルド・シュワルツェネッガー州知事時代までさかのぼる。高速鉄道建設などにかかる費用の財源とするため、約100億ドルの一般財源債発行の承認を有権者に求める法案(AB-3034)が2008年、州議会で可決されて同知事が承認。同年11月、法案は住民投票事項(Proposition 1A)になり、賛成票52.7%(反対票47.3%)で可決となった(2008年11月12日記事参照)。その後、高速鉄道計画を引き継いだジェリー・ブラウン前知事は積極的に計画を支持し、2015年にはサンフランシスコで、日本の新幹線導入を後押しする安倍晋三首相からトップセールスも受けた。任期中最後の施政方針演説(2018年1月)でも、高速鉄道プロジェクトを続行すべきだと強調したほどだ。しかし、2012年に予定していたセントラルバレーでの着工は2015年1月にようやく始まった。2012年時点でサンフランシスコ~ロサンゼルス間のサービス開始を2029年と予定していたが、2018年時点では同区間の工事完了を2033年に延期している。また、フェーズ1区間の完成に必要な費用は2008年時点で約330億ドルだったが、2018年時点で約773億ドルに修正されている。

表 カリフォルニア高速鉄道 開通ルート計画(2018年時点)

トランプ大統領はニューサム知事の演説を受け、高速鉄道計画のためカリフォルニア州が連邦から受けた計35億ドルの補助金を返還すべきだとツイッターで述べた。これに対し知事もツイッターで、同計画は続行しており返還はしないと答えた。また、カリフォルニア州の共和党議員は、知事が計画を縮小するのであれば、住民投票を再度行うべきだと述べている(フォックスニュース2月14日)。

(注)北はサクラメント・バレー、南はベイカーズフィールド盆地までのカリフォルニア内陸部を南北に走る地域を指す。農業が盛んで、250種以上の農作物が栽培され、推定価格は年間170億ドル。米国内産の果実、ナッツ類の4割がセントラルバレーで収穫される。カリフォルニア高速鉄道2018ビジネスプラン(開通路線地図:P16)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照。

(田中三保子)

(米国)

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