欧州委、通関分野でのノー・ディール対策準備を呼び掛け

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年02月19日

欧州委員会は2月18日、英国の合意なきEU離脱(ノー・ディール)のシナリオに備え、通関分野でも緊急対策を呼び掛けた。ノー・ディールに伴う混乱を最小限に抑えるため、欧州委は英国との取引を行う企業に対して、各国通関当局のコンタクトポイントを紹介、事前相談を促している。

各国通関当局の専門担当者の連絡先まで公表

欧州委によれば、英国のEU離脱(ブレグジット)に向けた今回の対策は関税や間接税(付加価値税・VATなど)を対象として、ノー・ディールの場合でも、ブレグジット以降も英国との取引に従事する企業が、可能な限り混乱を回避して円滑な事業展開を図れるようにすることが狙いだとしている。

欧州委のピエール・モスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税同盟担当)は「ノー・ディールの可能性は高まっている」とした上で、「欧州委とEU加盟各国の通関当局はEU・英国間の貨物に対する通関処理・検査の導入準備を進めている」と述べた。また、同委員は「ノー・ディールの場合、離脱日初日に適用が始まる通関ルールにどこまで適切に対応できるかは、企業の対応力次第」との厳しい見通しを示し、特に中小企業をはじめとするEU側の産業界への情報共有に万全を期す必要性を語った。

欧州委が、英国との取引を行うEU企業に対して注意喚起したのは、以下の3点だ。

  • 原産地規則などをはじめとする通関実務・ルールに対する技術的な知見や適切な人材を確保できているかどうか、自社の対応力を評価すること
  • 自社のサプライチェーンに英国が組み込まれている場合、ブレグジット以降もビジネスを円滑に進めるため、通関手続き上必要な各種許認可取得・登録などを検討すること
  • その他、あらかじめ取り得る対策がないかをEU加盟国の通関当局に確認しておくこと

なお、欧州委は税制・関税同盟のサイト上で、EU27カ国のブレグジット問題に特化した相談窓口・コンタクトポイント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを紹介している。一部の国では、担当者名やメールアドレスも公開されている。

今回の発表に合わせて、欧州委はノー・ディールに備えるための「参考情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」「5項目のチェックリストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」などもEU加盟各国語で公開した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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