大手5行、個人・小企業向け預金部門と投資銀行部門の分離を完了

(英国)

ロンドン発

2019年01月09日

英国5大銀行〔バークレイズ銀行、HSBC、ロイズ銀行、RBS銀行、スペインのサンタンデールグループ(注1)子会社の英国サンタンデール銀行〕は2019年1月1日までに、それぞれグループ内の銀行を、個人・小企業を対象としたリテール(小口金融)業務に特化した銀行(以下、RFB)と、それ以外のリスクの高い業務(大口顧客向けホールセール、国際業務、投資銀行業務など)を行う銀行(以下、NRFB)の2つに分け、両者を完全に分離(リングフェンス)させる作業を完了した。

今回の措置は、2013年の金融サービス(銀行改革)法に基づくリングフェンス規制によるもので、英国政府が世界金融危機以降に進めてきた銀行改革の一環だ。RFBとNRFBを分けることで、預金をリスクから保護し、経営危機などの折には優先的に保護救済できるようにするのが目的。対象となったのは、欧州経済領域(EEA)域内でリテールの預金額が250億ポンド(約3兆5,000億円、1ポンド=約140円)を超える5つの英国銀行グループ。

各行は、既存の顧客に対しては今回の規制による影響はほとんどない、と説明している。この規制により、英国法人の年間売上高が650万ポンド以上、または資本と負債の合計が326万ポンド以上、あるいは従業員数50人以上の企業が「中堅・大企業」とされた。同条件に満たない企業は「小企業」に仕分けされ、銀行グループ内の再編に当たって中堅・大企業はNRFBに、小企業はRFB内に口座が移管された。同規制では、RFBの安定性を確保する観点から、RFBの活動に多くの制限が課せられている。例えば、RFBにはEEA域外での支店開設やサービスの提供、トレーディング、デリバティブ取引など、リスクを伴う業務は認められていない。

こうした規制に対し、英国の金融機関を競争上不利にするとの批判が専門家などから寄せられている。「フィナンシャル・タイムズ」紙(2019年1月1日)は、「規制は英国銀行業界の行動を規制し、EU第2次金融商品市場指令(MiFID2、注2)施行に次ぐ負担となる。さらに、RFBは国際活動を通じてリスクが分散できない分、今後数年、英国経済の影響に縛られるだろう」とのKPMGの金融サービス部門長ジョン・ホルト氏の懸念を紹介している。

(注1)スペインのマドリードを本拠地とするスペイン最大の商業銀行グループ。

(注2)金融・資本市場に関する包括的な規制。2014年2月に発効し、2018年1月から適用開始。

(岩井晴美)

(英国)

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