デンソー、モントリオールにAI研究開発センターを開設

(カナダ)

トロント発

2019年01月16日

自動車部品大手デンソーの有馬浩二社長は1月10日、カナダ・モントリオールに同社の人工知能(AI)研究開発センターを開設したと発表した。自動車部品業界は変革期にあり、ハードウエアの製造から自動運転、クラウドコンピューティング、AIなどソフトウエアベースのソリューションへと転換し、先進技術を開発している。この記者発表には、ケベック州のフランソワ・ルゴー首相、モントリオール市のバレリー・プランテ市長、連邦政府のフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ・インフラ・地域社会相らも同席し、本投資へのケベック州やモントリオール市など地元の期待が高いことがうかがわれた。

AI開発の拠点として世界から注目されるモントリオール

投資・雇用の規模は明らかになっていないが、ルゴー州首相は「モントリオールが周辺の4大学を含めて、AIの開発拠点として世界的に注目されていることが評価された」と説明するとともに、「今後数年間で、AIは世界で年間最大1.4ポイントの生産性向上をもたらすと信じている。これはケベックでは、名目GDPが毎年40億カナダ・ドル(約3,280億円、Cドル、1Cドル=約82円)以上、増加することを意味する。モントリオールは世界でも最も高度なAI研究者を擁しており、デンソーがそれを知って、当地に研究開発センターの設立を決めたことを誇りに思う」と話した。

モントリオールの投資誘致機関モントリオール・インターナショナルによると、2017年の同市におけるAI業界への投資額は8億米ドルに上り、カナダの主要都市で最も多かったとのことだ。

デンソー・インターナショナル・アメリカの伊藤健一郎社長は「デンソーは46年間、カナダで事業を展開してきた。モントリオールの人々とともにこの開発センターを立ち上げ、コミュニティーとモビリティーの未来を築くことで、カナダとの関係がさらに深化していくことを喜ばしく思う。最高のAIおよびモビリティーソリューションを迅速に作成・開発するには、地元の才能とグローバルな専門知識の両方を活用する必要があると認識している。それで、当社はグローバルなコラボレーションを通じて、迅速な研究開発に専念している世界中の研究機関に投資をしている」と語った。

また、プランテ市長は「グレーターモントリオールは、高度な研究者の集中により、世界でも最も魅力的なAIハブの1つとなっている。この発表は、将来の自動車産業の研究開発拠点における都市の位置付けの転換点となる」と語った。モントリオールでは2016年以降、マイクロソフト、フェイスブック、グーグルの親会社アルファベットなどのIT企業のほか、ロイヤル銀行やサムスンなどがAIラボを開設または買収してきており、今回のデンソーの参入で、さらに集積が進むものと期待されている。

(酒井拓司)

(カナダ)

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